莎鶏

莎鶏

さやけい

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意味・由来

「莎鶏(さやけい)」は、キリギリス(またはクツワムシやハタオリ)の異称であり、中国最古の詩集『詩経』の「幽風・七月」に見られる「六月莎鶏振羽(六月に莎鶏羽を振るう)」という記述に由来する格調高い秋の季語です。「莎」はハマスゲなどの草、「鶏」は鳴く虫を鳥に喩えたもので、草の中で羽を擦り合わせて機織りのような音を響かせる虫を指します。和語の「きりぎりす」や「はたおり」と比べて漢語特有の雅やかさや古風で硬質な響きを持ち、秋の深まりや静寂を深沈と演出する際に用いられます。

この季語で詠むコツ

漢詩の伝統を引く雅名であるため、句全体に静謐さや文人趣味、知的な落ち着きを持たせるのが効果的です。単に虫の姿形を写生するだけでなく、更けゆく秋の夜の澄んだ空気感や、かすかな物音に耳を澄ます孤独感、机に向かう時間などを詠み込むと「莎鶏」という言葉の持つ古典的な情緒が引き立ちます。また、和語主体の柔らかい表現の中にこの季語を据えることで、心地よい緊張感を生むことができます。

相性のいい言葉・取り合わせ

・書斎や静寂を連想させる言葉(草双紙、机、灯火、古書、筆) ・秋の夜の気配(夜寒、露、月影、障子、夜半) ・草木や庭の情景(庭草、籬、露けし、叢)

莎鶏」の俳句例 (3件)

莎鶏の草にすだくや月の前
正岡子規【現代語訳】美しく照る月の光の下、草むらの中で莎鶏たちが群がり集まってしきりに鳴いている。【鑑賞】冴えわたる秋の月光と、庭の草むらから湧き起こる虫の合唱を捉えた一句です。「すだく(集く)」という動詞により、涼やかな虫の鳴き声が夜気の中に立体的に広がり、幽玄な秋の夜の美しさを際立たせています。
莎鶏や机の上の草双紙
正岡子規【現代語訳】秋の夜、莎鶏が草むらで鳴いている。私の机の上には読みかけの草双紙が置かれている。【鑑賞】病床にあっても文芸を愛した子規らしい、書斎の静かな情景です。外から聞こえてくる莎鶏の機織るような澄んだ鳴き声と、手元にある江戸情緒漂う草双紙(絵入り娯楽本)の組み合わせが、しみじみとした秋のくつろぎと風雅を巧みに描き出しています。
莎鶏の啼いて日暮れし籬かな
河東碧梧桐【現代語訳】莎鶏がしきりに鳴くうちに、竹や柴の垣根のあたりはすっかり日が暮れてしまったことだ。【鑑賞】夕暮れから日没へと移ろう時間の経過を、虫の声と薄暗くなる垣根の景によって描いています。古風な季語「莎鶏」が、どこか懐かしく寂しげな夕暮れの陰影を深く印象づけています。

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