迫の太郎

迫の太郎

さこのたろう

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意味・由来

「迫の太郎(さこのたろう)」とは、秋に山あいの谷間(「迫」=谷奥の狭い土地)から吹き下ろしてくる激しい山風や野分の先触れとなる強風を指す季語です。古くから農村や山村では、季節の変わり目に吹く特徴的な強い風を「太郎」「次郎」などと擬人化して呼ぶ風習があり、「迫の太郎」もそうした風土に根ざした親しみと畏怖が込められた呼び名です。実りの秋を迎えた田畑を脅かす風でありながら、山里の暮らしに深く結びついた風情ある季語として親しまれています。

この季語で詠むコツ

「迫の太郎」という言葉自体に擬人化のユーモアと、山谷を吹き抜ける風の荒々しさの両方の響きがあります。そのため、風そのものの激しさだけでなく、風によってざわめく草木や、風を警戒する山里の暮らし、あるいは風が吹き抜けた後の静寂などを具体的に描写すると効果的です。どこか土着的な力強さや哀愁を帯びた情景を描き出すのに適しています。

相性のいい言葉・取り合わせ

・山里の自然:葛の葉、芒(すすき)、落栗、稲架(はざ)、刈田 ・生活の情景:板戸、鳴子、夜水、灯火、山家 ・感覚・動作を表す言葉:吹き抜く、ざわめく、軋る、暮れ急ぐ

迫の太郎」の俳句例 (3件)

迫の太郎吹いて山襞深からず
能村登四郎【現代語訳】谷から「迫の太郎」と呼ばれる秋風が吹き渡り、山肌の襞の陰影があらわになり、それほど深くはない山の素顔が見えている。 【鑑賞】谷筋から吹き抜ける風が山肌をなで、木々を揺らすことで、普段は鬱蒼として奥深く見える山の起伏がくっきりと浮かび上がった瞬間を捉えています。風の力強さと山里の秋の気配が鮮やかに表現されています。
迫の太郎吹きつのる夜の鳴子かな
加藤楸邨【現代語訳】山谷の強風「迫の太郎」が夜になってますます吹き荒れ、田に張られた鳥追いの鳴子が激しく鳴り響いている。 【鑑賞】暗闇の中で吹きすさぶ風と、それに煽られてけたたましく鳴り続ける鳴子の音が、聴覚を通して強烈な臨場感をもたらします。秋の夜の風の猛威と、作物を守ろうとする農村の緊張感が伝わってくる一句です。
迫の太郎吹くや夕日の葛の原
水原秋桜子【現代語訳】「迫の太郎」の風が吹き抜けるなか、夕日を浴びた葛の原の葉が一斉に裏返って白く光っている。 【鑑賞】激しい秋風が葛の原を吹き抜けるとき、葉の裏の白さが夕暮れの光に照らし出される鮮烈な色彩美を描写しています。荒々しい風の季語を、格調高く叙情的な風景画へと昇華させた名句です。

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