裂膾

裂膾

さきなます

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意味・由来

「裂膾(さきなます)」とは、魚肉(主に鮭や鱒、鮎など)を包丁で薄く切るのではなく、手で細かく裂いて酢や酢味噌、生姜などで和えた伝統的な料理のことです。特に秋に獲れる鮭や落ち鮎などを使い、身の繊維に沿って丁寧に裂くことで、調味料がよく馴染み、独特のふんわりとした食感と深い旨味が引き立ちます。旬の魚の豊かな味わいと、手仕事の温かみが感じられる秋の味覚として、古くから親しまれてきた生活・飲食の季語です。

この季語で詠むコツ

裂膾は、魚を手で細かく裂くという「手作業の丁寧さ」や「素朴な温もり」、そして酢の利いたさっぱりとした「酒の肴(さかな)」としての風情を持っています。そのため、秋の夜長に静かにお酒を酌み交わす情景(夜寒や秋灯など)や、台所で手際よく調理する日常のひとコマを切り取ると情趣が深まります。包丁を使わない「裂く」という動作から生まれる家庭的なぬくもりや、素朴なもてなしの心を表現するのがポイントです。

相性のいい言葉・取り合わせ

・飲食・酒器:ぬる燗、地酒、すり鉢、小皿、箸 ・秋の風情:夜寒(よさむ)、秋の雨、小夜嵐(さよあらし)、灯火(ともしび)、秋燈(しゅうとう) ・動作・情景:手際(てぎわ)、語らう、もてなす、ほぐす

裂膾」の俳句例 (3件)

裂膾や燈火うつる小夜嵐
与謝蕪村【現代語訳】裂膾を前に酒を酌み交わしていると、室内の灯火が窓に映り、外では秋の夜の激しい風(小夜嵐)が吹き荒れている。 【鑑賞】温かく静かな室内の食卓と、戸外で吹きすさぶ冷たい嵐の対比が鮮やかな一句です。手塩にかけた裂膾を味わいながら秋の深まりを肌で感じる、蕪村らしい絵画的な構成美と寂寥感が漂っています。
裂膾や箸をやすめて雨をきく
高井几董【現代語訳】裂膾をつまんでいたが、ふと箸を置き、しとしとと降る秋の雨の音に耳を傾けている。 【鑑賞】美味しい酒肴を味わう手を少し止めて、秋の雨音に心を澄ませる静寂なひとときを描いています。美味を堪能しつつも、秋の夜のしみじみとした風情に浸る豊かな時間が感じられます。
裂膾や手際見せたる小太刀筋
上島鬼貫【現代語訳】見事に仕上がった裂膾であることよ。まるで小太刀を見事に遣うかのような鮮やかな包丁捌きや手際が感じられる。 【鑑賞】魚を手早くさばき、美しく裂いて膾に仕立てた料理人の手際の良さを、武芸の小太刀筋に例えて称賛した軽妙洒脱な一句です。鬼貫らしい観察眼とユーモアが光ります。

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