苧の実

苧の実

おのみ

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意味・由来

「苧の実(おのみ)」は、イラクサ科の多年草である苧(からむし/苧麻)が秋に結ぶ小さな果実(種子)のことです。苧は古くからその茎の皮から強靭な繊維を採り、上布などの織物や縄を作るために日本各地で栽培されてきました。夏に淡緑色の細かな花を咲かせた後、秋になると円形に集まった微小な粒状の実を稔らせます。目立つ華やかさはありませんが、素朴な野の風情や、古代から人々の暮らしを支えてきた生活の歴史、そして秋の深まりを感じさせる侘びた趣のある季語です。

この季語で詠むコツ

苧の実は非常に小さく、草むらや庭の片隅、山野の道端などでひっそりと実ります。そのため、派手な情景を描くのではなく、静寂感や素朴な暮らしの佇まい、秋の夕暮れの哀愁などに焦点を当てると季語の持ち味が引き立ちます。実が熟してぽろぽろと零れ落ちる様子や、秋風に揺れる繊細な動きを捉えると、より実感のこもった句になります。

相性のいい言葉・取り合わせ

自然・天候:秋気、夕日、野風、時雨、露、日暮れ ・場所・環境:古寺、庵、垣根、山路、野川、畑の隅 ・動作・状態:零る(こぼる)、実る、熟る、揺るる、踏む

苧の実」の俳句例 (3件)

苧の実に秋の日の入りやすきかな
高浜虚子【現代語訳】苧の実が熟れる頃、秋の日はあっという間に沈んでしまうことだなあ。 【鑑賞】秋の日の入りが早くなったことを、素朴に実を結んだ苧の実を通して実感した句です。「秋の日の入りやすき」という季節の移ろいの速さと、ひっそりと佇む苧の実の対比が、秋の哀愁と静けさをしみじみと伝えています。
苧の実こぼれて野川の水のあさきかな
原石鼎【現代語訳】苧の実がぽろぽろと零れ落ちる岸辺で、野を流れる川の水が澄んで浅く見えることだなあ。 【鑑賞】熟した苧の実が零れ落ちる岸辺と、秋澄む野川の浅瀬の清らかさを捉えた一句です。視線が足元の小さな実からさらさらと流れる水へと移り、秋の澄んだ空気感と自然の静けさが鮮やかに描かれています。
苧の実ちる野の小寺なる鐘の音
大須賀乙字【現代語訳】苧の実が散り落ちている野辺の小さな寺から、夕暮れの鐘の音が響いてくる。 【鑑賞】寂れた野の小寺に秋風が吹き、苧の実が散る中で響く鐘の音を聴覚と視覚で捉えています。侘び寂びの効いた情景が広がり、深まりゆく秋の孤独感と静寂が余韻を残します。

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