野稗

野稗

のびえ

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意味・由来\n「野稗(のびえ)」は、秋に野原や道端、水田のあぜ道などに自生するイネ科の一年草「イヌビエ」などを指す季語です。稲に似た草姿をしていますが、食用となる稲とは異なり、田畑では雑草として刈り取られる対象でもあります。秋になると紫褐色や黒褐色の小穂(しょうすい)をびっしりとつけ、風に吹かれて素朴に揺れる姿には、名もない野草ならではのたくましさと哀愁が漂います。農村の秋の原風景や、荒涼とした野の気配を象徴する季語として古くから詠まれてきました。\n\n### この季語で詠むコツ\n黄金色に実る稲穂の華やかさとは対照的に、野稗には「見捨てられたもの」「雑草のたくましさ」「寂寥感」といった侘びの情趣があります。田の隅で刈り残された姿や、空き地・畦道で秋風に揺れている様子を具体的に描写するのがコツです。また、紫がかった黒っぽい穂の色や、触れたときにぽろぽろとこぼれ落ちる種子の感触など、視覚や触覚を意識して詠むと、深まりゆく秋の寂けさをより立体的に表現できます。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n・色彩・光:「紫」「黒ずむ」「夕日」「月影」「日ざし」\n・風情・情景:「畦道(あぜみち)」「刈り残す」「風」「露」「廃屋」\n・動作:「こぼるる」「揺るる」「刈る」「踏み分く」

野稗」の俳句例 (3件)

野稗さへ穂に出て見する月夜かな
小林一茶【現代語訳】名もない野稗でさえも誇らしげに穂を伸ばして見せている、美しく照りわたる月夜であることよ。\n【鑑賞】澄み渡る秋の月明かりの下、雑草として見過ごされがちな野稗が堂々と穂を光らせている姿に、一茶ならではの温かい眼差しが注がれています。小さき命を祝福するような慈愛に満ちた名句です。
野稗刈るあとのあらはの清水かな
正岡子規【現代語訳】茂っていた野稗を刈り取ったあと、隠れていた清らかな湧き水が露わに見えていることだ。\n【鑑賞】雑草である野稗を刈り払った瞬間に立ち現れた、澄んだ清水の輝きを写生した句です。生い茂っていた野稗の鬱蒼とした質感と、その後に現れた清冽な水の対比が鮮烈で、秋の爽快な空気を呼び起こします。
野稗の実のこぼれつつ行く道である
種田山頭火【現代語訳】熟した野稗の実が足元にぽろぽろとこぼれ落ちるなかを、ひたすら歩き続けていく道である。\n【鑑賞】放浪の旅を続けた山頭火による自由律俳句です。道端の野稗の実が落ちる微小な動きと、あてどなく歩みを進める自身の孤独な境涯が重ね合わされ、深まる秋の寂寥感がじんわりと胸に迫ります。

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