黒鯊
autumn 生活

黒鯊

くろはぜ

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意味・由来

「黒鯊(くろはぜ)」は、秋の季語である「鯊(はぜ)」の一種、あるいはハゼ全般の泥黒い色合いに注目した呼び名です。ハゼは秋になると汽水域や沿岸の浅瀬に多く現れ、釣り人に親しまれます。泥底に同化するように身を潜めるその姿は、一見地味ですが、どこか愛嬌があり、秋の寂しげな水辺の景観を象徴する存在です。泥にまみれて生きるその泥臭さや、手にしたときのぬめり、小さくとも力強く跳ねる生命力が、秋の詩情を誘います。

この季語で詠むコツ

黒鯊は、砂や泥に擬態してじっとしていることが多いため、「動」と「静」の対比を意識すると効果的です。急に素早く逃げる様子や、釣り上げられてバケツの中で元気に跳ねる姿、あるいは水底で身を潜めている静かなたたずまいを描写します。また、泥の匂いや、秋の冷たくなり始めた水の感触など、五感に訴えかける表現を取り入れることで、黒鯊の生々しい生命力を引き出すことができます。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 水辺・砂泥に関わる言葉:「砂」「泥」「汐溜り(しおだまり)」「潮ぐもり」「浅瀬」「バケツ」「釣糸」
  • 季節感・質感を伝える言葉:「秋風」「冷たき」「濁る」「にじむ」「ひそむ」

黒鯊」の俳句例 (3件)

黒鯊の砂をかぶるや汐曇
飯田蛇笏【現代語訳】汐が満ちてきてうっすらと曇る水底で、黒鯊が砂をかぶるようにして身を潜めていることよ。 【鑑賞】「汐曇」という秋の穏やかで少し寂しげな水辺の空気感の中で、泥にまみれて生きる黒鯊の生態を生き生きと描いています。砂をかぶってカモフラージュするハゼの、ユーモラスながらも懸命な生命力が、静かで写実的な筆致で捉えられています。
黒鯊を釣るや入江の汐ぐもり
水原秋桜子【現代語訳】静かな入江がうっすらと潮で曇るなか、黒鯊を釣っていることだ。 【鑑賞】秋の入江の静寂な風景を描いた一句です。汐ぐもりのやわらかい光の中で、じっと糸を垂れて黒鯊のアタリを待つ作者の心境が、落ち着いた色彩とともに表現されています。静寂の中に自然と対峙する充実感が漂います。
黒鯊の逃げて濁れる汐だまり
高野素十【現代語訳】人の気配に驚いたのか、黒鯊が素早く逃げ去り、そのあとの汐だまりの水が濁っている。 【鑑賞】客観写生を重んじる素十らしい、一瞬の動きを捉えた見事な作品です。黒鯊の姿そのものを直接描くのではなく、彼らが逃げ去ったあとに残された「濁れる汐だまり」を描くことで、黒鯊の俊敏な野生の気配を逆説的に、かつ鮮烈に表現しています。

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