香橙
autumn 生活

香橙

こうとう

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意味・由来

「香橙(こうとう)」は、柑橘類の一種で、古くは「クネンボ(九年母)」の別称とされたほか、カボスやユズなど強い芳香を持つ柑橘類の総称としても用いられてきました。秋になると果実が黄色く熟し、その皮から放たれる爽やかで刺激的な香りが大きな特徴です。漢字が示す通り「香り高い橙(だいだい)」という意味を持ち、庭先や食卓でその香りを嗅ぐだけで、秋の深まりを五感で実感させてくれる非常に風情豊かな季語です。

この季語で詠むコツ

「香橙」を詠む際は、やはりその最大の魅力である「香り」をいかに表現するかが鍵となります。単に「香りが良い」と直接的に表現するのではなく、香りが風に乗って漂う様子や、雨の湿り気によって香りが引き立つ瞬間の空気感を捉えると効果的です。また、緑から黄色へと少しずつ色づいていく時間の経過や、素朴な家庭の庭先に実る温かみのある佇まいなど、日々の穏やかな暮らしと結びつけると、より叙情豊かな句に仕上がります。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 嗅覚や空気感を表す言葉(漂う、薫る、風、雨、朝、夕暮れ)
  • 素朴な生活の風景(垣根、小庭、日向、古びたる、母、庵)
  • 色彩や光を連想させる言葉(黄、青、陽光、木漏れ日、きらめく)

香橙」の俳句例 (3件)

香橙や日あたる方に少しづつ
正岡子規【現代語訳】香橙の実が、日のよく当たる側から少しずつ黄色く色づいてきていることよ。 【鑑賞】秋のやわらかな陽射しを浴びて、果実がゆっくりと色づいていく自然の静かな営みを、慈しむように観察した句です。「少しづつ」という言葉に、時の経過と秋が着実に深まっていく様子が穏やかに表現されています。
香橙や家つつましく垣低し
正岡子規【現代語訳】香橙が実っているあの家は、暮らしぶりが慎ましく、垣根も低いことだ。 【鑑賞】質素でつつましいながらも、心豊かな暮らしが営まれている民家の情景です。低い垣根越しに見える黄色い香橙の実と、そこから漂う豊かな香りが、家庭の温かみと秋ののどかな風情を際立たせています。
香橙の香やうつりゆく雨の中
飯田蛇笏【現代語訳】香橙の香りが、しっとりと降る雨のなかを漂い、時間の経過とともに移り変わっていくようだ。 【鑑賞】雨という視覚的・触覚的な背景のなかに、香橙の鮮烈な香りを重ね合わせた繊細な一句です。雨の冷気と香橙の清涼な香りが混ざり合い、静寂のなかで五感が研ぎ澄まされていくような美しさがあります。

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