今年渋
autumn 時候

今年渋

ことししぶ

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意味・由来

「今年渋(ことししぶ)」とは、その年の秋に収穫された青い渋柿を砕いて搾り、作られたばかりの新しい柿渋(かきしぶ)のことです。「新渋(しんしぶ)」とも呼ばれます。柿渋は古くから木材の防腐・防虫・防水塗料や和傘・渋紙の原料、あるいは民間薬として生活に欠かせない実用液でした。晩秋の農家や作業場で、青柿を石臼などで搗いて搾り出す工程は、独特の強い発酵臭と渋みを含んだ香気が辺りに立ち込める、生活感あふれる秋の風物詩です。

この季語で詠むコツ

「今年渋」を詠む際は、視覚だけでなく嗅覚や聴覚といった五感をフルに働かせることがポイントです。渋を搾るために臼で柿を搗く「ドスン」という音、搾り出された液体の赤褐色や澄んだ色合い、そして鼻をつく独特のツンとした匂いなどを具体的に捉えると、現場の生々しい活気や秋の深まりが表現できます。また、「今年」という言葉が持つ「今年の秋の収穫の成果」という鮮度や季節の推移を意識すると効果的です。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 作業・道具に関する言葉: 臼(うす)、杵(きね)、桶(おけ)、甕(かめ)、搾る、搗く(つく)、布巾(ふきん)
  • 感覚・情景に関する言葉: 匂ひ(におい)、赤し、濁り、庭、日暮れ、秋風、柿紅葉

今年渋」の俳句例 (3件)

今年渋つくや隣の臼の音
正岡子規【現代語訳】隣の家から、今年搾る柿渋を作るために青柿を搗く臼の音がトントンと響いてくることだよ。【鑑賞】隣家から聞こえてくる臼の音だけで「今年も柿渋を仕込む季節がやってきたのだな」と察する、長閑な秋の日常を描いた一句です。音を媒介にして季節の深まりと生活の手触りを巧みに表現しています。
今年渋搾るや庭の柿紅葉
正岡子規【現代語訳】庭で新しく柿渋を搾っていると、その傍らで柿の木の葉が美しく紅葉していることだ。【鑑賞】柿の実から渋を搾る作業現場と、頭上に広がる柿の紅葉を取り合わせた、色彩感の豊かな句です。渋の赤褐色と色づいた葉の照り映える様子が、晩秋の実りの季節をくっきりと描き出しています。
今年渋桶にたまれる匂ひかな
正岡子規【現代語訳】搾り出された今年の新渋が桶にたっぷりと溜まり、独特の強い香りをあたりに放っていることだなあ。【鑑賞】柿渋特有の青臭く発酵したような強い匂いをそのまま捉えた一句です。桶に満ちていく液体の量感と立ちのぼる芳香から、実りの秋の作業の充実感と現場の生々しい空気が伝わってきます。

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