木の実の時雨
autumn 天文

木の実の時雨

このみのしぐれ

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意味・由来

木の実の時雨(このみのしぐれ)」は、秋が深まる頃、クヌギやどんぐりなどの木の実が、風や鳥の羽ばたき、あるいは自然の重みによって、パラパラと音を立てて絶え間なく落ちてくる様子を指します。その音や様子が、まるで秋の通り雨(時雨)が降っているかのように聞こえることから、この美しい表現が生まれました。ただ木の実が落ちるという物理的な現象を超えて、山野の静寂、深まる秋の哀愁、そして自然の営みの豊かさを聴覚的・視覚的に捉えた非常に情趣ある季語です。

この季語で詠むコツ

この季語の真髄は「音」にあります。実際に水が降る「時雨」ではないため、乾いた木の葉や地面を叩く「パラパラ」「コトコト」といった音の重なりを、いかに表現するかがポイントです。また、周囲の「静けさ」や「光の加減」を対比させることで、木の実の時雨という現象がより鮮やかに浮かび上がります。静かな山寺や、人通りの途絶えた散歩道など、聴覚が研ぎ澄まされるシチュエーションを描写すると効果的です。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 静寂や光を表す言葉:「静けさ」「ひるさがり」「日向(ひなた)」「影」「畳」
  • 場所や空間を表す言葉:「山寺」「境内」「古道」「軒端(のきば)」
  • 動作や状態を表す言葉:「落ちる」「弾く」「佇む」「聴く」

木の実の時雨」の俳句例 (3件)

木の実しぐれしてをり寺のひるさがり
飯田蛇笏【現代語訳】昼下がりの静かなお寺の境内に、パラパラと木の実が時雨のように絶え間なく落ちてきている。 【鑑賞】静寂に包まれた山寺の午後。風もなく穏やかな空気の中で、ただ木の実が落ちる音だけが響き渡っています。蛇笏ならではの重厚で格調高い雰囲気が、静かな時の流れの中に感じられる名句です。
木の実しぐれして日のあたる畳かな
村上鬼城【現代語訳】外からは木の実が時雨のように降り注ぐ音が聞こえるが、室内には静かに秋の日差しが畳を照らしている。 【鑑賞】外の賑やかな音(木の実の落ちる音)と、室内の静寂で温かい日差しのコントラストが見事です。「畳」という生活空間に焦点を当てることで、のどかで、少し寂しげな秋の日常の美しさが巧みに表現されています。
木の実しぐれしきりなる日は旅を思ふ
尾崎放哉【現代語訳】木の実が時雨のようにしきりに降り落ちる音を聞いていると、どこか遠くへ旅に出たいという思いが募ってくる。 【鑑賞】放哉らしい自由律俳句に通ずる、詩情豊かな一句です。降り続く木の実の音に心を乱され、あるいは誘われるようにして、旅情(あるいは孤独な彷徨への憧れ)を抱く心の揺らぎが繊細に描かれています。

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