㡡の別れ
autumn 生活

㡡の別れ

かやのわかれ

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意味・由来 「㡡の別れ(かやのわかれ)」とは、秋が深まり涼しくなって、夏の間お世話になった蚊帳(かや)を片付けることを指す季語です。かつての日本の生活において、蚊帳は夏の夜の必需品であり、安眠を守ってくれる大切な存在でした。それを秋風が吹く頃に取り外す行為は、単なる道具の片付けに留まらず、過ぎ去った夏への惜別の情や、忍び寄る秋の寂しさを象徴するものとして、古くから俳人たちに詠まれてきました。「㡡」は「蚊帳」の異体字・古語的表現です。 ### この季語で詠むコツ 蚊帳を畳む、押し入れにしまうという具体的な動作を描写するだけでなく、蚊帳がなくなったことで急に広くなった部屋の様子や、肌に触れる冷気など、「物理的な変化」から生じる「心の隙間」や「寂しさ」を表現するのがコツです。また、夏の間の家族の思い出や、一人で過ごした夜の静けさなど、生活のディテールと結びつけると、より情緒豊かな句になります。 ### 相性のいい言葉・取り合わせ ・五感に響く言葉(「肌寒し」「風の音」「ともしび」「広き部屋」など) ・片付けの動作(「畳む」「しまう」「押し入れ」など) ・時刻や光を表す言葉(「朝の光」「夕闇」「月影」など)

㡡の別れ」の俳句例 (3件)

蚊帳の別れ仏の顔のすずしさよ
小林一茶【現代語訳】蚊帳を取り外した朝、それまで蚊帳越しに霞んでいた仏壇の仏様の顔が、すっきりと、そして涼しげに見えることよ。【鑑賞】一茶の優しくも鋭い観察眼が光る句です。蚊帳を片付けたことで部屋が広々と見え、朝の澄んだ空気の中で仏様の表情までが清々しく感じられる様子を、秋の訪れの喜びとともに詠んでいます。
蚊帳のわかれ涙を見せぬ用心に
炭太祇【現代語訳】蚊帳を片付ける別れの時に、お互いの涙を見せまいとするためか、蚊帳の陰に隠れるようにして用心していることだ。【鑑賞】江戸中期の俳人、炭太祇による句。「蚊帳の別れ」という季節の移り変わりによる片付けの行為を、男女や親しい人との別れの場面に見立てて、少し艶っぽく、かつユーモラスに表現したドラマチックな作品です。
蚊帳のわかれ燈を消んとする時か
与謝蕪村【現代語訳】蚊帳を今夜限りで片付けようとするその別れの夜、いよいよ部屋の灯火を消そうとする、まさにその瞬間に、しみじみとした寂しさがこみ上げてくることよ。【鑑賞】蚊帳を吊った寝室の、ほの暗く親密な空間。それを明日からは取り払うという最後の夜、灯りを消す瞬間の名残惜しさを、蕪村らしい絵画的かつ情緒的な視点で捉えた一首です。

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