勝海螺
autumn 地理

勝海螺

かちばい

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意味・由来\n\n「勝海螺(かちばい)」とは、巻貝の一種である「バイ貝」の別名・雅称であり、俳句においては秋の季語として扱われます。「バイ」という音が「倍」に通じ、さらに「勝ち」という言葉を重ねることで、縁起の良い「勝貝(かちがい)」として武家社会などで重宝されました。実際、戦出陣の儀式や祝いの席、あるいは正月の飾りなどにも用いられた歴史を持ちます。生物としては、秋になると殻が一段と硬くなり、身が締まって味わい深くなる特徴があります。\n\n### この季語で詠むコツ\n\n名前が持つ「勝つ」という勢いのあるおめでたい響きと、実際のバイ貝が持つ、砂泥にまみれてひっそりと生きる「地味で物静かな姿」とのギャップに着目するのがポイントです。干潟や砂浜にポツンと置かれた貝の姿から、秋の寂寥感や自然の厳しさを引き出すと、味わい深い句になります。無理にめでたさを強調するよりも、ありのままの寂びた佇まいを写生する方が、この季語の魅力を引き出しやすいでしょう。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n\n・景観を表す言葉:砂浜、干潟、潮だまり、引き潮、石、夕日、秋嵐\n・触覚や視覚に訴える言葉:硬し、冷たし、濡れたる、光る、動かぬ\n・対比となる言葉:静寂、波の音、子供の足跡

勝海螺」の俳句例 (3件)

勝海螺や石にまじりて砂の上
広瀬惟然【現代語訳】勝海螺が、海岸の石の間にまじりながら、砂の上にぽつんと置かれている。\n【鑑賞】砂浜に転がる勝海螺(バイ貝)のありのままの姿を描写しています。石と砂という、自然の無機質な風景の中に、ひっそりと息づく巻貝の生命感が、静寂の中で際立っています。無駄な装飾を削ぎ落とした「軽み」の境地を感じさせる、惟然らしい平淡で味わい深い一句です。
勝海螺のからばかりなるあらしかな
与謝蕪村【現代語訳】嵐が吹き荒れたあとの海岸には、中身のない勝海螺の空っぽの殻ばかりが転がっていることよ。\n【鑑賞】激しい嵐のエネルギーと、その後に取り残された中身のない「空殻」の静けさとの対比が鮮やかです。嵐の猛威を直接空や海を描くのではなく、足元に転がる勝海螺の「からばかり」という微小な存在を通して表現している点に、蕪村の卓越した絵画的センスと叙情性が光ります。
勝海螺の動くともなき干潟かな
加舎白雄【現代語訳】潮の引いた干潟がどこまでも広がっているが、そこに点在する勝海螺は一向に動く気配もない。\n【鑑賞】干潟の広大さと静けさを、勝海螺の「動かない」という静止した描写によって見事に表現しています。一見、死んでいるのか生きているのかわからない貝ですが、じっと次の潮が満ちるのを待っている密かな生命力を内包しており、秋の物寂しい空気感と見事に調和しています。

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