稲葉の衣

稲葉の衣

いなばのころも

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意味・由来\n「稲葉の衣(いなばのころも)」は、青々とした田んぼや黄金色に色づく稲の葉が、幾重にも重なり合って一面を覆っている様子を「着物(衣)」に見立てた、秋の雅やかな季語です。古今和歌集などの古典和歌の時代から「稲葉」は衣の袖や裾の擦れ合いに例えられて愛好されてきました。実りの秋を迎え、田一面を包み込む稲の葉の重なりや、秋風に吹かれてさやさやと衣擦れの音を立てる様子、あるいは朝露を浴びてしっとりと濡れる情景など、どこか優雅でみやびな風情を含んでいます。\n\n### この季語で詠むコツ\n単に稲刈り前の田園風景を描くだけでなく、「衣」という見立てが持つ優美さや感触を意識することが大切です。風が吹き抜けたときの「衣擦れの音(さざめき)」、朝露や夕露に濡れる「湿り気・重み」、あるいは緑から黄色・黄金色へと移ろう「染め色」のグラデーションなどに視点を向けると、この季語ならではの風流な味わいが際立ちます。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n・聴覚に響く言葉:さやさや、衣擦れ、風の音、そよぐ\n・視覚や色彩の言葉:露、しぐれ、黄金、茜色、重ね、織る\n・情調を表す言葉:朝明(あさけ)、夕暮、旅衣、ほつれ

稲葉の衣」の俳句例 (3件)

秋風の稲葉の衣すれ合ひて
加舎白雄【現代語訳】秋風が吹き渡り、稲の葉という衣がさやさやと擦れ合っている。\n【鑑賞】広大な田んぼを渡る秋風によって、稲の葉が触れ合うかすかな衣擦れの音を捉えています。自然の静けさと実りの豊かさが同時に感じられる、情景豊かな一句です。
露を摺る稲葉の衣色深し
各務支考【現代語訳】朝露に摺り染められたかのように、稲の葉の衣は秋が深まるにつれて色を濃くしていることだ。\n【鑑賞】稲の葉を露で染められた衣に見立て、秋の深まりとともに増す緑から黄金色への色彩の深まりを繊細に捉えた一句です。芭蕉の高弟である支考らしい、雅びやかで軽妙な趣があります。
稲葉の衣ほしほして過る露
宝井其角【現代語訳】稲の葉という衣を次々と乾かしながら、露の季節が駆け抜けていくことだ。\n【鑑賞】「衣を干す」という日常の動作と、朝露に濡れた稲葉が秋の陽光と風で乾いていく自然の推移を重ね合わせています。其角ならではの機知と軽やかなリズムが光る名句です。

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