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市女笠(いちめがさ)は、平安時代から鎌倉時代以降にかけて、身分の高い女性や町屋の女性が外出や旅、寺社参詣の際に用いた笠です。中央が少し尖った円錐形の菅笠で、日差しや雨を防ぐとともに、周囲から顔を隠すために「虫の垂れ布(むしのたれぎぬ)」と呼ばれる薄い布を周囲に垂らして使われました。夏の日除け具としての性格や、風に揺れる薄絹の涼やかな佇まいから、夏の季語として定着しています。
現代では、葵祭などの伝統行事や、熊野古道の観光案内などで目にする機会が多い季語です。詠む際には、単なる古風な道具の描写にとどまらず、歩く女性の美しい所作、垂れ布が夏の風にふわりと揺れる瞬間、あるいは深い木立の青葉と笠のコントラストなどを捉えると効果的です。遠い平安の旅路に思いを馳せるような歴史的な情緒を添えたり、夏の強い日差しと薄絹の生み出す陰影の涼しさに着目すると、奥行きのある一句になります。