腹広蜻蛉

腹広蜻蛉

はらびろとんぼ

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意味・由来\n腹広蜻蛉(ハラビロトンボ)は、その名の通り腹部が平たく極端に幅広い形をしたトンボです。体長は3〜4センチ程度と小柄ながら、ずんぐりとした独特のユーモラスな体型を持っています。成熟した雄はシオカラトンボのように白粉を吹いた青灰色になり、雌や未成熟の雄は鮮やかな黄色と黒のまだら模様が特徴です。晩春から姿を見せますが、初秋の乾いた日差しの中で地面や草の葉先にじっと止まっている姿が印象的であるため、秋の季語として扱われます。\n\n### この季語で詠むコツ\n赤蜻蛉やすがれ蜻蛉のようなダイナミックな群翔や哀愁とは異なり、腹広蜻蛉は地面すれすれを低く飛び、すぐに石や枯れ葉、土の上などに止まる習性があります。腹部を上に反らせる独特の静止姿勢や、平たい体の質感、低空をゆったりと漂う姿など、虫の身体的な特徴や素朴な仕草に注目して写生するのがコツです。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n地表に近い世界を描くため、「泥」「乾いた土」「小石」「日溜まり」「畦道」などの足元の景情と相性が抜群です。また、「低し」「反らす」「平たき」など、形状や動作を表す具象的な言葉と組み合わせると、この虫特有の存在感が鮮やかに立ち上がります。

腹広蜻蛉」の俳句例 (3件)

腹広蜻蛉低く翔ちたるばかりなる
能村登四郎【現代語訳】腹広蜻蛉が、ただ地表すれすれを低くふわりと飛び立っただけのことである。【鑑賞】勢いよく空へ舞い上がるのではなく、わずかに地を離れてまたすぐに止まるような腹広蜻蛉の不器用で控えめな生態を、「低く翔ちたるばかりなる」と淡々と捉えています。秋の静かな時間と、虫のささやかな命の動きが見事に調和した一句です。
腹広蜻蛉泥のひび割れまぶしめり
桂信子【現代語訳】腹広蜻蛉が、乾いてひび割れた泥の白く眩しい照り返しを浴びている。【鑑賞】水辺の湿地が秋の日差しによって乾き、亀裂の入った泥地。そこに止まる腹広蜻蛉の平たい体と強い秋光の対比が鮮烈です。「まぶしめり」という把握に、虫自身の体感に寄り添うような鋭い詩情が光っています。
腹広蜻蛉とまれば尾をば反らしけり
右城暮石【現代語訳】腹広蜻蛉が草や枝先に止まると、その平たい尾をツンと上へ反らせた。【鑑賞】腹広蜻蛉の典型的な習性である「日光を避ける、あるいは威嚇のために腹部を直角近く持ち上げる姿勢」を正確に写生しています。観察の確かさと、どこか滑稽で愛らしい虫の佇まいが素直な言葉で生き生きと描かれています。

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