花咲蟹

花咲蟹

はなさきがに

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意味・由来

花咲蟹(はなさきがに)は、秋の味覚として知られる甲殻類の一種で、タラバガニの近縁種です。主に北海道の根室近海で獲れ、夏から初秋にかけて漁の最盛期を迎えます。名前に「蟹」と付きますが、生物学的にはヤドカリの仲間であり、脚は左右四本ずつです。 名前の由来には二つの説があります。一つは、主な水揚げ地である根室の「花咲港(あるいは花咲半島)」にちなむという地名説。もう一つは、茹でると甲羅全体が鮮烈な朱赤に染まり、まるで真っ赤な大輪の花が咲いたように見えることから名付けられたという説です。全身を覆う鋭いトゲと、濃厚でコクのある甘い身、独特の強い磯の風味が特徴の北国の季語です。

この季語で詠むコツ

花咲蟹の魅力は、その「激しい見た目」と「鮮やかな色彩」、そして「北の海の力強さ」にあります。 全身にとげがびっしりと生えた厳めしい姿は、怒りや荒々しさを感じさせます。また、茹で上げたときの爆発的な赤色は視覚的インパクトが非常に強いため、色の対比(白煙、青い海、黒い皿など)を意識すると情景が鮮やかに立ち上がります。さらに、根室やオホーツク海といった北辺の厳しい風土や旅情と結びつけることで、単なる食材描写にとどまらない骨太な句作ができます。

相性のいい言葉・取り合わせ

・色彩・光:朱、紅、炎、赤、湯気、波しぶき ・感触・形態:棘(とげ)、甲羅、硬し、太き脚、割る、剥く ・風土・場所:根室、オホーツク、最果て、北の海、潮風、市場、鍋

花咲蟹」の俳句例 (3件)

花咲蟹棘直立し怒り易し
山口誓子【現代語訳】花咲蟹はその全身の鋭いトゲをピンと真っ直ぐに立てており、今にも激しく怒り出しそうな荒々しい姿をしている。 【鑑賞】花咲蟹の外見的特徴である無数の棘に焦点を当て、その凶暴なまでの造形美を「怒り易し」と擬人化して捉えた名句です。対象を即物的に観察しながらも、北の海の生命が放つ激しい気迫をシャープに描き出しています。
花咲蟹脚もぎとらる火の色に
大野林火【現代語訳】茹で上げられた花咲蟹の脚が、まさに燃え盛る火のような鮮烈な赤色の中で次々ともぎ取られていく。 【鑑賞】茹で上がった花咲蟹の圧倒的な「赤」を「火の色」と表現し、豪快に脚を外して食膳に供される生命の力強さと残酷さを鮮やかに写し取っています。視覚の鮮明さと動的なリズムが際立つ一句です。
花咲蟹赤き甲羅を打ち割れり
細見綾子【現代語訳】真っ赤に茹で上がった花咲蟹の硬い甲羅を、勢いよく打ち割ったことだ。 【鑑賞】硬く頑丈な甲羅に刃や槌を入れ、豪快に割った瞬間の音や立ち上る湯気、濃厚な磯の香りが読み手に迫ってきます。「赤き甲羅」という色彩と「打ち割れり」という力強い動詞の響き合いによって、北国の味覚を堪能する充実感が端的に表現されています。

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