放ち亀

放ち亀

はなちがめ

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意味・由来\n「放ち亀(はなちがめ)」とは、主に陰暦八月十五日の「放生会(ほうじょうえ)」などの仏教法会において、功徳を積むために川や池に放たれる亀のことです。捕らえられた生き物を野に放して慈悲の心を培う儀式に由来し、秋の季語として扱われます。放される亀の甲羅には、祈願の言葉や戒名、年月日などが墨で書き込まれることも多く、人間界の祈りや執着を背負わされながらも、水を得て自由へと還っていく存在としての独特な陰影と哀歓を帯びています。\n\n### この季語で詠むコツ\nただ亀が水に入っていく様子を描くだけでなく、「功徳を願う人間の生々しい祈り」と「水に戻って自由を取り戻す亀の無心さ」という対比を意識すると奥行きが生まれます。甲羅に書かれた文字が水に滲む様子や、水底の藻へ潜っていく姿、首や手足を恐る恐る伸ばす仕草など、具体的な動きや質感に焦点を当てるのがポイントです。秋の澄んだ水や、放生会の賑わいと水辺の静寂のコントラストを捉えるのも効果的です。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n- 寺社・儀式に関する言葉:放生会、石段、願文、読経、池の柵\n- 水や光に関する言葉:秋の水、水輪、濁り、藻(も)、月影、夕日\n- 動き・感覚を表す言葉:潜る、手足、甲羅、墨、洗ふ、重たし

放ち亀」の俳句例 (3件)

放ち亀這入や池の月の中
宝井其角【現代語訳】放たれた亀が、池の水面に美しく映る秋の月の中へと潜り入っていくことだ。\n【鑑賞】放生会が行われる陰暦八月十五日は名月の夜でもあります。人の手から放たれた亀が、澄み切った池に映る満月の光の中へと泳ぎ去っていく姿を幻想的に捉えています。仏事の厳かさと秋の夜の美しさが鮮やかに融合した、江戸俳諧らしい洒脱で絵画的な名句です。
放ち亀甲に墨を洗はるる
阿波野青畝【現代語訳】放生会で放たれた亀が水に入り、甲羅に書かれていた墨の文字が水に洗われて薄れていく。\n【鑑賞】放ち亀の甲羅には、放生主の願いや名前が墨で記される習わしがありました。水底へと潜っていくうちに、人間の現世利益の墨跡が秋の清らかな水で洗い流されていく様子を繊細に切り取っています。人間の祈りの重さと、自然へと帰っていく亀の清々しさが静かに対比されています。
放ち亀波を蹴つては潜りけり
正岡子規【現代語訳】放たれた亀が、水面の波を後足で力強く蹴っては、底深くへと潜っていった。\n【鑑賞】子規らしい明快な写生句です。人の手から解放された亀が、最初は警戒しつつも、水を得て生き生きと身を翻し、力強いキックで水底へ消えていく動勢が生き生きと描写されています。「波を蹴つて」という写実的な捉え方に、生き物の本能の躍動と自由への回帰が鮮烈に表現されています。

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