敗醬

敗醬

はいしょう

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意味・由来

「敗醬(はいしょう)」とは、秋の七草の一つとして親しまれている「女郎花(おみなえし)」の漢名(漢語表記)であり、漢方薬としての生薬名でもあります。秋に鮮やかな黄色い小花を傘状に咲かせる優美な植物ですが、その根や全草を掘り起こして乾燥させると、腐敗した豆味噌(醬)のような独特の強い臭気を放つことから、古代中国で「敗れたる(腐った)醬」という意味で「敗醬」と名付けられました。 俳句においては、和名の「女郎花」が持つ女性的で嫋やか、あるいは華やかな風情に対して、「敗醬」の文字を用いることで、漢詩的で硬質な響きや、どこか枯淡で野趣あふれる無常感を醸し出すことができます。

この季語で詠むコツ

「女郎花」として詠む場合は女性らしさやたおやかさに焦点が当たりがちですが、「敗醬」という季語を選ぶ際は、あえて硬派で静寂な情景や、鄙びた風景を描くのがコツです。古寺の片隅や荒れた野辺、夕暮れの寂寥感など、少し乾いた質感や哀愁を帯びた場面とよく調和します。また、漢名特有の音読みの重厚感を活かし、調べを力強く引き締めたいときにも効果的です。

相性のいい言葉・取り合わせ

・古寺、垣根、背戸(裏口)、野道、石蕗(つわぶき) ・日暮、夕影、黄落、秋風、露、野分 ・枯淡、寂けし、揺らぐ、佇む、影

敗醬」の俳句例 (3件)

敗醤や男の背戸の日の名残
永井荷風【現代語訳】敗醤の花が咲く男の一人住まいの裏戸口に、秋の夕日が名残惜しそうに西日を落としている。 【鑑賞】荷風らしい孤独と風情が漂う一句。「女郎花」ではなく「敗醤」という漢名を選んだことで、男所帯の殺風景さと、そこに差し込む秋の夕日の侘しさが鮮やかに際立っています。
敗醤や寺の垣根の日かげ草
正岡子規【現代語訳】古寺の垣根のあたりに敗醤が咲き、その足元にはひっそりと日陰の草が生い茂っている。 【鑑賞】寺の静寂な佇まいと、素朴に咲く敗醤の取り合わせが美しい句です。華美な花園ではなく、日陰草とともにひっそりと咲く様子に、子規の冷静な写生眼と秋の静寂が感じられます。
敗醤の風のゆらぎにまぎれなし
角川源義【現代語訳】秋風に揺れている敗醤の黄色い花は、まぎれもなくそこに存在を主張して揺らいでいる。 【鑑賞】風に吹かれて細い茎を揺らす敗醤の姿を、確かな存在感として捉えた句です。「まぎれなし」という強い断定が、秋の寂しさの中にあっても鮮明に黄色を放つ花の凛とした気品を際立たせています。

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