秋の沼

秋の沼

あきのぬま

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意味・由来

「秋の沼(あきのぬま)」は、秋の訪れとともに静けさを深めた沼のたたずまいを指す三秋の季語です。夏の間は繁茂する水草や水生昆虫などで賑わっていた沼も、秋風が吹き渡る頃には水草が枯れ始め、水が一段と澄んできます。水面には澄み渡った秋の青空や流れる白雲、周囲の紅葉した木々が鮮明に映し出され、静寂と寂寥感が漂います。夏の生命感に満ちた水辺から、静まり返った澄明な世界へと移り変わる情趣を含んでいます。

この季語で詠むコツ

「秋の沼」を詠む際は、その「澄んだ水面の静寂」や「光と影のコントラスト」に着目するのがポイントです。ただ沼を描写するだけでなく、沼に映る空や雲、枯れゆく水草、あるいはふと訪れる水鳥の波紋など、わずかな動きや変化を取り入れることで、かえって周囲の静けさを際立たせることができます。また、秋の夕暮れの寂寥感や、秋晴れの明るい哀愁など、光の加減を捉えると情感が深まります。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 視覚・反射:「雲の影」「水底」「青空」「夕日」「枯蓮」「水草」
  • 聴覚・動態:「波紋」「鳰(かいつぶり)の鳴き声」「落葉」「風の音」
  • 情緒・時間:「暮れゆく」「静けさ」「澄む」「日向」「薄暮」

秋の沼」の俳句例 (3件)

一塊の雲来て去りぬ秋の沼
高浜虚子【現代語訳】ひと塊の秋の雲が上空へ流れてきて水面に影を落とし、やがて去っていった、静かな秋の沼であることよ。 【鑑賞】静まり返った秋の沼の上空を、ただ一片の雲が通り過ぎていく様子を淡々と捉えています。雲が過ぎ去った後の変わらぬ沼の静けさと透明感が際立ち、客観写生の見事な境地を示しています。
秋の沼立ち去りがたき日向かな
詠み人知らず【現代語訳】秋の沼の水辺に注ぐ柔らかな日差しが心地よく、いつまでもこの場所から立ち去りがたく思われる。 【鑑賞】秋の澄んだ空気の中で、沼辺に差す暖かい日だまりの心地よさに惹かれている句です。秋特有の穏やかでどこか寂しい美しさが、立ち去りがたいという心情に優しく滲み出ています。
鳰啼いて夕づきにけり秋の沼
臼田亜浪【現代語訳】鳰(かいつぶり)が一声鋭く鳴いて、秋の沼のあたりはいよいよ夕暮れの気配を深めていった。 【鑑賞】静寂に包まれた秋の沼に、一羽の鳰の声が響き渡ることで、深まりゆく秋の夕暮れの寂しさと美しさが鮮明に浮かび上がります。聴覚を通して情景の奥行きを感じさせる一句です。

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