1879年 - ?

臼田亜浪

うすだあろう

作風・特徴

作風の解説はまだ登録されていません。

生涯・略歴

臼田 亞浪(うすだ あろう、1879年(明治12年)2月1日 - 1951年(昭和26年)11月11日)は、日本の俳人。本名は臼田卯一郎(ういちろう)。

代表句 (20件)

筧草にこぼるる水のひかりかな
季語: 筧草 (autumn)
【現代語訳】筧に生い茂る草に向かって、ぽつりぽつりとこぼれ落ちる水滴が、秋の日差しを浴びて美しく光っている。\n【鑑賞】静寂な山里や庭園の中で、水滴の一瞬の輝きを捉えた、清涼感と静けさが同居する美しい一句です。澄んだ秋の空気感が伝わってきます。
刈田面を這ひまはりたる夕日かな
季語: 刈田面 (autumn)
【現代語訳】稲が刈り取られた後の田んぼの表面を、まるで地を這うようにして、晩秋の夕日が隅々まで照らし出していることよ。 【鑑賞】障害物のなくなった平らな刈田に、夕暮れ時の低い光が長く影を引きながら差し込んでいる光景です。「這ひまはりたる」という動的な表現によって、夕日の光が刈り株の隙間をなめるように広がっていく様子が、力強く活写されています。
川鰍の石に吸ひつく流れかな
季語: 川鰍 (autumn)
【現代語訳】急に流れる川の水の中で、川鰍が石にぴたりと吸い付くようにしてじっと耐えている。その激しい流れの様子よ。 【鑑賞】清流の激しい流れに流されることなく、力強く石にしがみついている川鰍の生態を生き生きと描いています。「吸ひつく」という動的な表現によって、小さな命のたくましさと、秋の川水の冷たさや勢いが触覚的に伝わってきます。
新雪にわが影のびて旅いそぐ
季語: 新雪 (winter)
【現代語訳】新しく積もった雪の上に、自分の長い影を落としながら、私は先を急いで旅を続けている。 【鑑賞】まっさらな新雪の白さと、冬の斜光が作り出す自分の黒い影との鮮やかなコントラストが極めて美しい一句です。旅人の孤独感と、雪に行く手を阻まれつつも急がねばならない焦燥感が、静的な雪景色の中に動的なドラマを生み出しています。
刈田原一鳥下りて暮れにけり
季語: 刈田原 (autumn)
【現代語訳】広々とした刈田原に、一羽の鳥がすうっと舞い降りて、そのまま日が暮れてしまったことだ。【鑑賞】静まり返った刈田原の夕暮れを詠んだ句です。遮るもののない広大な空間に、ただ一羽の鳥が降り立つという極めてシンプルな動きが、周囲の圧倒的な静けさと孤独感をいっそう引き立てています。まるで一幅の水墨画を見るかのような、静寂の極致が表現されています。
小赤げら打つ音ひゞく落葉かな
季語: 小赤げら (autumn)
【現代語訳】小赤げらが木を叩く乾いた音が、落葉の敷き詰められた林の中に心地よく響き渡っている。 【鑑賞】秋が深まり落葉した静かな森に響く、リズミカルなドラミングの音を捉えた聴覚的な名句です。静寂と音の対比が際立っています。
鮭颪とざす海あり陸地あり
季語: 鮭颪 (autumn)
【現代語訳】冷たく激しい鮭颪が吹き荒れ、海も陸地も暗雲と寒気にすっかり閉ざされてしまっている。 【鑑賞】初冬を前に、天地が厳しい寒さと暗さに覆われていく北国の風景を雄大に捉えています。「海あり陸地あり」という大づかみな表現によって、世界全体が鮭颪という自然の猛威に呑まれているような圧倒的な寂寥感が伝わってきます。
鯖雲や十里の渚波たたず
季語: 鯖雲 (autumn)
【現代語訳】空一面に鯖雲が広がり、見渡す限り遥か十里も続く砂浜には、打ち寄せる波すら立たず静まり返っている。 【鑑賞】天高く広がる鯖雲の波模様と、波一つ立たない静寂な海の広がりが見事な対比をなしています。秋の澄み切った大気と、どこまでも続く水平線の雄大な静けさが心に染み渡る名句です。
秋口の風吹きわたる畳かな
季語: 秋口 (autumn)
【現代語訳】秋の初めの涼やかな風が、部屋の畳の上をさっと吹き抜けてゆくことだ。【鑑賞】開け放たれた室内の畳の上を通り過ぎる風の感触から、季節が秋へと移り変わった清々しさを素直に詠み上げています。生活空間の中で捉えた季節の移ろいが心地よく伝わってきます。
秋雲のいづれも山を離れけり
季語: 秋雲 (autumn)
【現代語訳】秋の雲が、どれもこれも山頂からすっと離れて青空へ流れ去っていったことよ。\n【鑑賞】山肌を離れていく秋の雲の軽やかさと、どこまでも澄み渡る高い秋空の広がりを捉えた一句です。「いづれも」という言葉により、山と雲の距離感や爽快な季節の空気が鮮やかに伝わってきます。
秋されや山に暮れゆく水のおと
季語: 秋され (autumn)
【現代語訳】秋深まる山里で日が暮れてゆく中、川の水音だけが一段と響きわたっている。【鑑賞】山間の日暮れの静けさと、そこに響く水音の清らかさを詠んだ句です。視界が夕闇に包まれていくにつれて研ぎ澄まされる聴覚を通して、深まる秋の寂寥と大自然の悠久さをしみじみと感じさせます。
秋湿りしてゐる蔵の重さかな
季語: 秋湿 (autumn)
【現代語訳】秋の冷たい湿気を吸い込んで、土蔵がいつも以上に重厚な存在感を放っていることだ。【鑑賞】秋の湿気を含んだ土蔵の質感を「重さ」という感覚で見事に捉えています。静寂の中にどっしりとした建物の気配が浮かび上がり、深まりゆく秋の侘びしさが伝わってくる一句です。
秋闌けて石澄みわたる流れかな
季語: 秋闌 (autumn)
【現代語訳】秋もいよいよ深まり、川の浅瀬にある小石までもがくっきりと澄みきって見える美しい水流であることよ。【鑑賞】深秋の冷徹なまでに澄んだ水と、底に見える石の描写を通じて、秋が極まった静寂と純度の高い美しさを鮮やかに捉えた名句です。
秋の灯や机の上にある静か
季語: 秋ともし (autumn)
【現代語訳】秋の灯りが机の上を照らしており、そこにはただ満ち足りた静けさがある。 【鑑賞】机の上の限られた光の輪の中に、目に見えない「静けさ」そのものが実体を持って存在しているかのように捉えた一句です。秋の夜の澄み切った空気と、内省的で穏やかな時間の広がりを巧みに表現しています。
秋の朝日みづから昇るけしきかな
季語: 秋の朝日 (autumn)
【現代語訳】秋の朝日は、あたかも自らの力と意志で堂々と昇っていくかのような雄大な光景であることよ。\n【鑑賞】秋の澄み切った大気の中、一切の濁りなく凛然と昇る太陽の威厳と美しさを捉えています。自然の崇高な営みに対する深い感動と敬虔なまなざしが込められた一句です。
鳰啼いて夕づきにけり秋の沼
季語: 秋の沼 (autumn)
【現代語訳】鳰(かいつぶり)が一声鋭く鳴いて、秋の沼のあたりはいよいよ夕暮れの気配を深めていった。 【鑑賞】静寂に包まれた秋の沼に、一羽の鳰の声が響き渡ることで、深まりゆく秋の夕暮れの寂しさと美しさが鮮明に浮かび上がります。聴覚を通して情景の奥行きを感じさせる一句です。
秋の行方見送る水のかがやきに
季語: 秋の行方 (autumn)
【現代語訳】去りゆく秋の行方を、きらきらと輝く水面の光の中に見送っている。【鑑賞】流れる川や海の水面に反射する晩秋の光の中に、過ぎ去る季節を見送る詩情を捉えています。寂しさの中にも光の美しさが際立ち、澄み切った余韻を残す名句です。
小豆引く音からからの日和かな
季語: 小豆引く (autumn)
【現代語訳】小豆を引き抜くたびに、よく乾いた莢がからからと音を立てる。まことに心地よい秋晴れの日であることよ。\n【鑑賞】「からから」というオノマトペによって、小豆の莢が天日で十分に乾燥していること、そして当日の湿度の低く澄んだ秋晴れ(日和)が見事に表現されています。収穫の心地よいリズムと明るい光を感じさせる一句です。
蝗串夕焼雲のくづれけり
季語: 蝗串 (autumn)
【現代語訳】蝗を刺した串が置かれている空で、夕焼けに染まる雲が刻一刻と形を崩している。 【鑑賞】手前にある「蝗串」という生活感あふれる小景から、ふと目を上げた先の広大な夕空へと視線が広がります。夕焼け雲がゆっくりと崩れゆく秋の黄昏の無常感と、地に根ざした人の営みが美しく調和しています。
稲小屋の藁の匂ひの夜となりぬ
季語: 稲小屋 (autumn)
【現代語訳】稲小屋から漂う藁の香りに包まれるうちに、あたりはすっかり夜となった。【鑑賞】日が暮れて冷気が降りてくる中、稲小屋の周囲に立ち込める乾燥した藁の匂いに着目しています。視界が暗くなることで嗅覚が研ぎ澄まされ、深まりゆく秋の夜の静けさがしみじみと伝わってきます。
臼田亜浪(うすだあろう)の生涯と代表的な名句 | 俳句びと歳時記WEB | 俳句びと