秋の桑

秋の桑

あきのくわ

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意味・由来

「秋の桑(あきのくわ)」とは、秋を迎えた桑の木や桑畑のことです。桑は養蚕(蚕を育てること)のために古くから日本各地で大切に育てられてきました。春から夏にかけて蚕の餌として青々と茂り、何度も葉を摘み取られた桑も、秋になると残った葉が黄色く色づき、やがて枯れ落ちていきます。最盛期の活気ある養蚕の営みが一段落し、役目を終えつつある桑畑には、秋特有の静けさや哀愁が漂います。季節の移ろいと人々の暮らしの歴史を感じさせる季語です。

この季語で詠むコツ

春夏の青葉の勢いとは異なり、秋の桑には「衰えゆく美しさ」や「静けさ」「寂寥感」があります。葉を摘まれて節くれだった枝ぶり、黄色く色づいた葉が秋風に擦れ合う音、夕日を浴びる桑畑の広がりなど、視覚や聴覚を意識して具体的に描写するのがコツです。また、養蚕農家の暮らしや山里の情景と重ね合わせることで、生活の温もりや切なさを深みをもって表現できます。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 日暮れ、夕影、茜空(夕方の光線と黄葉のコントラスト)
  • 山風、野分、露(秋の気象現象)
  • 畦道、農具、山里、小道(農村風景を想起させる語)
  • 滴る、ちぎる、枯る(桑の葉や樹液の動きを表す動詞)

秋の桑」の俳句例 (3件)

秋の桑ちぎれば白き汁を出す
日野草城【現代語訳】秋の桑の葉を手でちぎると、茎の切り口から白い樹液がにじみ出てくる。 【鑑賞】秋になって色あせ始めた桑の木から葉をもぎ取った瞬間の、生々しい生命力を捉えた一句です。衰えゆく秋の気配の中で、桑が秘めている白い乳液のような樹液の鮮烈なコントラストが、乾いた季節に強い命の感触を際立たせています。
抱かれつゝ秋の桑見る幼な子よ
渡辺水巴【現代語訳】大人の腕に抱かれながら、ぼんやりと秋の桑畑を眺めている幼い子どもよ。 【鑑賞】親や大人に抱かれた幼子の純真な瞳と、秋の風情を帯びて静まり返る桑畑の対比が印象的な句です。子どもが何気なく見つめる秋の桑の風景を通して、どこか懐かしく物悲しい里山の叙情が温かく描き出されています。
朝風や秋の桑摘む人の声
正岡子規【現代語訳】涼やかな朝の風が吹き抜けるなか、秋の桑の葉を摘む人々の話し声が聞こえてくる。 【鑑賞】秋の朝の澄み切った空気と、桑畑で働く人々の声をとらえた写生句です。爽やかな風の中に響く人の声が、晩秋に向かう桑畑の静けさを引き立てつつ、そこに息づく健やかな日常の営みを鮮明に伝えています。

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