俳句の聖地・山廬が通年公開に|飯田蛇笏・龍太が暮らした家の見どころ・行き方・吟行ガイド
はじめての俳句サポーター 凛
執筆者

山梨県笛吹市の山あいに、「俳句の聖地」と呼ばれる家があります。
俳人の飯田蛇笏(いいだ だこつ)と、その子の飯田龍太(りゅうた)が暮らした家、山廬(さんろ)です。
これまで山廬は、年に数回の公開日にしか入れませんでした。 それが2026年4月1日から通年公開されています。
現在は笛吹市の施設「飯田蛇笏・龍太記念館 ~俳句の聖地 山廬~」として、思い立ったときに訪ねられる場所になりました。
歳時記や句集で何度も出会った一句が、どのような家や庭から生まれたのか。 その風景を、自分の目と耳で確かめられます。
この記事では、山廬の見どころ・歩き方・アクセス・句作のヒントを、はじめて訪れる方にも分かりやすくご紹介します。
この記事でわかること
- 山廬とはどんな場所か、なぜ2026年から通年公開になったのか
- 俳諧堂・主屋・赤松・竹林・後山・句碑の見どころ
- 石和温泉駅からの行き方と、無理なく楽しむ2つのコース
- 俳諧堂2階にある句会場の利用方法
- 蛇笏の句を手がかりにした、山廬での句作のヒント
あわせて読みたいおすすめ記事
初心者でも楽しめる「吟行」入門ガイド >1. 山廬(さんろ)とは ― 飯田蛇笏・龍太が暮らした「俳句の聖地」
山廬は、蛇笏と龍太の住まいであると同時に、日本の近代俳句を支えた活動拠点でもありました。
山廬は、もともと飯田蛇笏の別号です。 「山の粗末な建物」という趣旨で、自らの居宅をそう呼びました。
やがて蛇笏・龍太が暮らした家と、その敷地全体を指す名前になりました。
現在の正式名称は、「飯田蛇笏・龍太記念館 ~俳句の聖地 山廬~」です。
飯田蛇笏は1885年、現在の笛吹市境川町に生まれました。 若くして東京へ出て、早稲田大学に学びます。
そこで高浜虚子に師事し、その後、故郷へ戻りました。
1962年に亡くなるまで、甲斐の自然のなかで句を詠みつづけました。
蛇笏が活動の中心とした俳誌が、「雲母(うんも)」です。
前身の「キラヽ」で選者を務め、のちに主宰となりました。 1930年からは発行所も山廬に置かれます。
つまり山廬には、全国から俳句や原稿が集まっていました。 住まいであると同時に、俳句活動の拠点でもあったのです。
蛇笏の没後は、四男の龍太が「雲母」を引き継ぎました。
「雲母」は1992年8月、900号をもって終刊します。 親子二代の俳句の舞台が、この山廬でした。
なぜ「今年から」行きやすくなったのか
山廬は長く飯田家の住まいであり、一般公開は限られた日に行われていました。
2026年1月、飯田秀實氏と一般社団法人山廬文化振興会から、土地と建物が笛吹市へ寄附されました。
主屋と俳諧堂を後世へ引き継ぎ、文化振興に役立ててほしいという思いによるものです。
これを受け、2026年4月1日から笛吹市の施設として通年公開されています。
今すぐ一句詠んでみましょう
※俳句交流SNS「俳句びと」なら、詠んだ句をそのまま投稿して全国の仲間と共有できます
2. 山廬の見どころ ― 俳諧堂・主屋と赤松・後山の句碑
山廬では建物だけでなく、竹林や川、後山まで歩くと、蛇笏と龍太が暮らした風景をより深く味わえます。
公開されているのは、主屋の玄関・書斎・座敷、俳諧堂、庭、竹林、そして裏山の後山(ござん)です。
俳諧堂(はいかいどう)
まず立ち寄りたいのが、敷地内に復元された俳諧堂です。
現在の俳諧堂は2017年に復元されました。 1階は展示施設、2階は句会場です。
蛇笏・龍太が愛用した品や作品などを、間近で見ることができます。
一般観覧の入館券も、俳諧堂内の券売機で購入します。
2階の句会場は、申請すれば利用できます。
申請は原則として、利用日の6か月前から3日前まで。 吟行で詠んだ句を、その日のうちに仲間と読み合うこともできます。
主屋と赤松
主屋は、江戸時代後期に建てられたとされています。
飯田家は代々名主を務めた家柄です。 主屋には「式台玄関」や書院式の座敷が残ります。
庭には、樹齢400年以上と推定される赤松があります。 大きな枝を三方へ広げています。
蛇笏や龍太が過ごした書斎も、現在の公開範囲です。 「ここで日々、言葉と向き合っていた」と想像しながら歩いてみてください。
竹林、狐川、そして後山
主屋の裏には竹林が広がり、その先を狐川(きつねがわ)が流れています。
橋を渡った丘が「後山」です。 丘の上からは、甲府盆地や甲斐の山々を望めます。
2019年には、蛇笏・龍太ゆかりの茅葺きの四阿「狐亭」も復元されました。
龍太には「一月の川」を題材とした、よく知られた句があります。 句そのものは引用せず、現地では狐川の流れにも目を向けてみましょう。
後山の句碑 ― 蛇笏が建てた、ただひとつの句碑
後山の中腹には、一基の句碑があります。
刻まれているのは、蛇笏自身の句ではありません。
山口素堂
江戸時代の俳人・山口素堂の句です。
山廬文化振興会によると、この碑は蛇笏の書によるものです。 蛇笏が建立した句碑は、これひとつだけとされています。
3. 蛇笏の句を、山廬で読む
蛇笏の名句は、遠い名所ではなく、山廬での暮らしと身近な自然から生まれています。
1914年、「ホトトギス」の俳句欄で発表された、蛇笏初期の代表作です。
足もとの小さな芋の露から、遠くの連山へ。 一句のなかで視線が大きく広がります。
里芋の葉に宿る露と、その向こうに連なる山々。 小さなものと大きなものが、十七音のなかで向かい合います。
山廬や後山を歩いてから読むと、「連山」が蛇笏の日常の風景であったことを実感しやすくなります。
蛇笏の代表句のひとつです。 1933年の「雲母」発表時には、現在とは異なる表記でした。
その後、句集『霊芝』へ収める際に、現在知られる「くろがねの」の形へ改められました。
夏を過ぎても、軒に残された風鈴。 鉄の硬質な音が、秋の冷えた空気を伝えます。
蛇笏の句は、遠い名所へ旅をしなければ生まれないものではありません。
家のまわりの植物、山、風、音。 身近なものを見る目こそ、山廬から持ち帰りたいものです。
4. 山廬の歩き方 ― 所要時間と、シニア向けの2つのコース
後山まで無理に歩く必要はありません。体力に合わせて、約1時間または1時間半〜2時間のコースを選びましょう。
山廬は、大きな観光施設を次々と回る場所ではありません。 家と庭、その奥の竹林や後山をゆっくり味わう場所です。
コースA:主屋と庭をじっくり(坂を登らないコース)
主屋と庭を中心に歩くコース
- 俳諧堂 → 主屋 → 庭の赤松 → 竹林の入口
- 所要時間の目安:約1時間
- 膝や腰に不安のある方にもおすすめ
展示や建物をじっくり味わいたい方にも向いています。 後山へ行かなくても、山廬の魅力は十分に楽しめます。
コースB:後山まで歩く
蛇笏・龍太が暮らした土地を深く歩くコース
- コースA → 竹林 → 狐川 → 後山 → 素堂の句碑・狐亭 → 丘の上
- 所要時間の目安:1時間半〜2時間ほど
- ふだんから歩く習慣がある方におすすめ
後山には登りだけでなく、帰りの下りもあります。 行きで体力を使い切らないようにしましょう。
どちらのコースにも共通する注意
- 底がすべりにくい、歩きやすい靴がおすすめです
- 夏は虫よけ、寒い時期は防寒を用意しましょう
- 後山へ行く場合は、帰りの体力も残しておきましょう
- もとは人の住まいです。静かに見学しましょう
5. 山廬で句を作るヒント
名句を作ろうと構えなくても大丈夫です。その日に見たものや聞いた音を、ひとつ句帳へ残してみましょう。
ヒント1:「遠く」と「足もと」を、両方見る
「芋の露」の句のように、まず遠くを見て、そのあと足もとへ目を移してみましょう。
大きな山と一枚の葉。 広い空と小さな石。 離れたものを並べるだけでも、句の入口になります。
ヒント2:家のなかの「もの」を詠む
机、柱、敷居、窓、座敷。 部屋全体ではなく、ひとつのものに目を向けます。
「古い家だった」ではなく、「柱に午後の日が当たっていた」と見れば、句の材料が具体的になります。
ヒント3:音を拾う
竹林を抜ける風、狐川の水音、遠くの鳥。 静かな場所では、小さな音がよく聞こえます。
少し立ち止まり、聞こえた音を三つほど句帳に書くのもおすすめです。
ヒント4:季節をそのまま受けとる
春なら芽吹きや竹の秋。 夏なら青葉や鳥の声。 秋なら露や澄んだ山なみ。 冬なら枯れた木々や遠山。
蛇笏も龍太も、この場所で何十年もの季節を見つづけました。
私たちが出会えるのは、その長い時間のなかの一日だけです。 その日に自分が見たものを詠めば、それで十分です。
6. 山廬の開館時間・休館日・入館料と、石和温泉駅からのアクセス
山廬へは石和温泉駅から車で約15分です。電車で訪れる場合は、タクシーなどを組み合わせましょう。
飯田蛇笏・龍太記念館 ~俳句の聖地 山廬~
- 所在地:山梨県笛吹市境川町小黒坂270-1
- 開館時間:9:00〜16:00
- 休館日:毎週水曜日(祝日の場合はその翌日)、12月28日〜1月5日
- 入館料:大人300円/高校生・大学生200円/小学生・中学生100円
- 俳諧堂(句会場)使用料:1時間500円
20人以上には団体料金も設定されています。 2026年9月時点の情報です。
おでかけ前には、笛吹市「飯田蛇笏・龍太記念館 ~俳句の聖地 山廬~」公式ページで最新情報をご確認ください。
アクセス
山廬は山あいにあり、石和温泉駅から徒歩で向かう場所ではありません。
電車の場合
JR中央本線「石和温泉駅」から、タクシーなどを利用します。
車で約15分が目安です。
車の場合
中央自動車道「一宮御坂IC」から、車で約10分が目安です。
山廬文化振興会の公式サイトにも、石和温泉駅や車で訪れる方向けの案内があります。
帰りもタクシーを使う予定なら、往路で帰りの配車方法も確認しておくと安心です。
7. あわせて訪ねたい場所と、泊まる旅
山梨県立文学館や石和温泉を組み合わせれば、山廬を中心にした一泊二日の吟行も楽しめます。
山梨県立文学館(甲府市)
山廬とあわせて訪ねたいのが、甲府市の山梨県立文学館です。
常設展示の第4室には、「飯田蛇笏・飯田龍太記念室」があります。
山廬では「2人が暮らした場所」を見る。 文学館では、原稿や書画など「残された資料」を見る。
両方を巡ると、2人の俳人の姿がより立体的に見えてきます。
文学館のある芸術の森公園には、飯田蛇笏・飯田龍太の文学碑もあります。
石和温泉に泊まる
山廬の最寄り駅がある石和(いさわ)は、温泉地です。
東京方面からなら日帰りもできます。 ただ、一泊すると吟行の時間にゆとりが生まれます。
山廬を歩いた日の夜に、宿で句帳を開く。 翌日は甲府へ移動して、山梨県立文学館を見る。
そんな二日がかりの吟行もおすすめです。
山梨への旅を探す
JTBで山梨・石和温泉方面の旅行を探す >よくある質問
山廬はいつから一般公開されていますか
2026年4月1日から、笛吹市の施設「飯田蛇笏・龍太記念館 ~俳句の聖地 山廬~」として通年で公開されています。 それ以前は、年に数回の公開日を中心に見学できる場所でした。
山廬の休館日と開館時間を教えてください
開館時間は9:00〜16:00です。
休館日は毎週水曜日(祝日の場合はその翌日)と12月28日〜1月5日です。 おでかけ前に公式サイトをご確認ください。
車がなくても山廬へ行けますか
はい。 最寄り駅はJR中央本線「石和温泉駅」です。
駅からタクシーなどを利用し、車で約15分が目安です。 公共交通で訪れる場合は、帰りの移動方法も先に確認しておくと安心です。
山廬で句会を開くことはできますか
できます。 俳諧堂の2階が句会場になっており、1時間500円で利用できます。
一般観覧以外の施設利用は申請が必要です。 原則として、利用日の6か月前から3日前までに申請します。
8. まとめ
山廬で持ち帰りたいのは、蛇笏と同じ句ではありません。その日に自分だけが見つけた風景です。
山廬は、大きな観光地ではありません。
ひとつの家があり、庭があり、竹林があり、川があり、裏山があります。
そこに暮らした蛇笏と龍太は、身近な自然や日々の暮らしを、何十年も俳句にしてきました。
特別な場所へ出かけなくても、句は生まれる。
山廬に立つと、そのことをあらためて感じられます。
蛇笏と同じ句を作る必要はありません。 庭の一本の木でも、竹を渡る風でも、水の音でもかまいません。
自分が山廬で見つけたものを、ひとつ句帳へ持ち帰ってみてください。
あわせて読みたいおすすめ記事
初心者でも楽しめる「吟行」入門ガイド >山廬の旅を、もう少し楽しむために
吟行の準備や、山廬とあわせて訪ねたい場所をまとめました。
まず読みたい
初心者でも楽しめる「吟行」入門ガイド >最新の施設情報
飯田蛇笏・龍太記念館 ~俳句の聖地 山廬~ >山廬をもっと知る
山廬文化振興会 >あわせて訪ねたい場所
山梨県立文学館 >一泊で楽しみたい方へ
石和温泉・山梨方面の旅行を探す >あなたも一句詠んでみませんか?
「俳句びと」は、俳句を愛する人々が集うSNSです。
日々の感動を十七音に込めて、全国の仲間と共有しましょう。
会員登録は無料 / 50代〜80代の方に大人気
