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吟行2026年9月25日(更新: 2026年9月28日)

俳句の聖地・山廬が通年公開に|飯田蛇笏・龍太が暮らした家の見どころ・行き方・吟行ガイド

はじめての俳句サポーター 凛

はじめての俳句サポーター 凛

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俳句の聖地・山廬が通年公開に|飯田蛇笏・龍太が暮らした家の見どころ・行き方・吟行ガイド
飯田蛇笏・龍太が暮らした山廬の主屋と庭の赤松
飯田蛇笏・龍太が暮らした山廬の主屋と庭。出典:一般社団法人 山廬文化振興会様よりご提供

山梨県笛吹市の山あいに、「俳句の聖地」と呼ばれる家があります。

俳人の飯田蛇笏(いいだ だこつ)と、その子の飯田龍太(りゅうた)が暮らした家、山廬(さんろ)です。

これまで山廬は、年に数回の公開日にしか入れませんでした。 それが2026年4月1日から通年公開されています。

現在は笛吹市の施設「飯田蛇笏・龍太記念館 ~俳句の聖地 山廬~」として、思い立ったときに訪ねられる場所になりました。

歳時記や句集で何度も出会った一句が、どのような家や庭から生まれたのか。 その風景を、自分の目と耳で確かめられます。

この記事では、山廬の見どころ・歩き方・アクセス・句作のヒントを、はじめて訪れる方にも分かりやすくご紹介します。

この記事でわかること

  • 山廬とはどんな場所か、なぜ2026年から通年公開になったのか
  • 俳諧堂・主屋・赤松・竹林・後山・句碑の見どころ
  • 石和温泉駅からの行き方と、無理なく楽しむ2つのコース
  • 俳諧堂2階にある句会場の利用方法
  • 蛇笏の句を手がかりにした、山廬での句作のヒント

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1. 山廬(さんろ)とは ― 飯田蛇笏・龍太が暮らした「俳句の聖地」

山廬は、蛇笏と龍太の住まいであると同時に、日本の近代俳句を支えた活動拠点でもありました。

山廬は、もともと飯田蛇笏の別号です。 「山の粗末な建物」という趣旨で、自らの居宅をそう呼びました。

やがて蛇笏・龍太が暮らした家と、その敷地全体を指す名前になりました。

現在の正式名称は、「飯田蛇笏・龍太記念館 ~俳句の聖地 山廬~」です。

山廬の入口に掲げられた井伏鱒二筆の木製表札
山廬の入口に掲げられた井伏鱒二筆の表札。出典:一般社団法人 山廬文化振興会様よりご提供

飯田蛇笏は1885年、現在の笛吹市境川町に生まれました。 若くして東京へ出て、早稲田大学に学びます。

そこで高浜虚子に師事し、その後、故郷へ戻りました。

1962年に亡くなるまで、甲斐の自然のなかで句を詠みつづけました。

蛇笏が活動の中心とした俳誌が、「雲母(うんも)」です。

前身の「キラヽ」で選者を務め、のちに主宰となりました。 1930年からは発行所も山廬に置かれます。

つまり山廬には、全国から俳句や原稿が集まっていました。 住まいであると同時に、俳句活動の拠点でもあったのです。

蛇笏の没後は、四男の龍太が「雲母」を引き継ぎました。

「雲母」は1992年8月、900号をもって終刊します。 親子二代の俳句の舞台が、この山廬でした。

なぜ「今年から」行きやすくなったのか

山廬は長く飯田家の住まいであり、一般公開は限られた日に行われていました。

2026年1月、飯田秀實氏と一般社団法人山廬文化振興会から、土地と建物が笛吹市へ寄附されました。

主屋と俳諧堂を後世へ引き継ぎ、文化振興に役立ててほしいという思いによるものです。

これを受け、2026年4月1日から笛吹市の施設として通年公開されています。

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2. 山廬の見どころ ― 俳諧堂・主屋と赤松・後山の句碑

山廬では建物だけでなく、竹林や川、後山まで歩くと、蛇笏と龍太が暮らした風景をより深く味わえます。

公開されているのは、主屋の玄関・書斎・座敷、俳諧堂、庭、竹林、そして裏山の後山(ござん)です。

俳諧堂(はいかいどう)

山廬の俳諧堂と飯田蛇笏・龍太が暮らした主屋
山廬の俳諧堂と主屋。出典:一般社団法人 山廬文化振興会様よりご提供

まず立ち寄りたいのが、敷地内に復元された俳諧堂です。

現在の俳諧堂は2017年に復元されました。 1階は展示施設、2階は句会場です。

蛇笏・龍太が愛用した品や作品などを、間近で見ることができます。

一般観覧の入館券も、俳諧堂内の券売機で購入します。

2階の句会場は、申請すれば利用できます。

申請は原則として、利用日の6か月前から3日前まで。 吟行で詠んだ句を、その日のうちに仲間と読み合うこともできます。

主屋と赤松

主屋は、江戸時代後期に建てられたとされています。

飯田家は代々名主を務めた家柄です。 主屋には「式台玄関」や書院式の座敷が残ります。

飯田蛇笏・龍太が暮らした山廬の主屋内部と畳の座敷
飯田蛇笏・龍太が暮らした山廬の主屋内部。出典:一般社団法人 山廬文化振興会様よりご提供
山廬の母屋の式台に飾られた彼岸花とすすき、ぶどう、団子、稲穂
山廬の母屋の式台にしつらえられた秋の飾り。出典:一般社団法人 山廬文化振興会様よりご提供

庭には、樹齢400年以上と推定される赤松があります。 大きな枝を三方へ広げています。

蛇笏や龍太が過ごした書斎も、現在の公開範囲です。 「ここで日々、言葉と向き合っていた」と想像しながら歩いてみてください。

飯田蛇笏が過ごした山廬の書斎と囲炉裏
飯田蛇笏が過ごした山廬の書斎と囲炉裏。出典:一般社団法人 山廬文化振興会様よりご提供

竹林、狐川、そして後山

主屋の裏には竹林が広がり、その先を狐川(きつねがわ)が流れています。

山廬の敷地に広がる竹林
山廬の敷地に広がる竹林。出典:一般社団法人 山廬文化振興会様よりご提供

橋を渡った丘が「後山」です。 丘の上からは、甲府盆地や甲斐の山々を望めます。

2019年には、蛇笏・龍太ゆかりの茅葺きの四阿「狐亭」も復元されました。

紅葉に囲まれた山廬の後山と茅葺きの建物
紅葉に包まれた山廬の後山。出典:一般社団法人 山廬文化振興会様よりご提供

龍太には「一月の川」を題材とした、よく知られた句があります。 句そのものは引用せず、現地では狐川の流れにも目を向けてみましょう。

後山の句碑 ― 蛇笏が建てた、ただひとつの句碑

後山の中腹には、一基の句碑があります。

刻まれているのは、蛇笏自身の句ではありません。

眼には青葉山ほととぎす初松魚
山口素堂

江戸時代の俳人・山口素堂の句です。

山廬文化振興会によると、この碑は蛇笏の書によるものです。 蛇笏が建立した句碑は、これひとつだけとされています。

3. 蛇笏の句を、山廬で読む

蛇笏の名句は、遠い名所ではなく、山廬での暮らしと身近な自然から生まれています。

芋の露連山影を正しうす
飯田蛇笏
夕日の光を受ける里芋畑と一面に広がる葉
一面に葉が広がる里芋畑

1914年、「ホトトギス」の俳句欄で発表された、蛇笏初期の代表作です。

足もとの小さな芋の露から、遠くの連山へ。 一句のなかで視線が大きく広がります。

朝露のような水滴がついた里芋の大きな葉
水滴をまとった里芋の葉。「芋の露」の情景を思い浮かべる一枚

里芋の葉に宿る露と、その向こうに連なる山々。 小さなものと大きなものが、十七音のなかで向かい合います。

山廬や後山を歩いてから読むと、「連山」が蛇笏の日常の風景であったことを実感しやすくなります。

くろがねの秋の風鈴鳴りにけり
飯田蛇笏
山廬の母屋の軒下に吊るされた風鈴
山廬の母屋の軒下に吊るされた風鈴。出典:一般社団法人 山廬文化振興会様よりご提供

蛇笏の代表句のひとつです。 1933年の「雲母」発表時には、現在とは異なる表記でした。

その後、句集『霊芝』へ収める際に、現在知られる「くろがねの」の形へ改められました。

夏を過ぎても、軒に残された風鈴。 鉄の硬質な音が、秋の冷えた空気を伝えます。

蛇笏の句は、遠い名所へ旅をしなければ生まれないものではありません。

家のまわりの植物、山、風、音。 身近なものを見る目こそ、山廬から持ち帰りたいものです。

4. 山廬の歩き方 ― 所要時間と、シニア向けの2つのコース

後山まで無理に歩く必要はありません。体力に合わせて、約1時間または1時間半〜2時間のコースを選びましょう。

山廬は、大きな観光施設を次々と回る場所ではありません。 家と庭、その奥の竹林や後山をゆっくり味わう場所です。

コースA:主屋と庭をじっくり(坂を登らないコース)

主屋と庭を中心に歩くコース

  • 俳諧堂 → 主屋 → 庭の赤松 → 竹林の入口
  • 所要時間の目安:約1時間
  • 膝や腰に不安のある方にもおすすめ

展示や建物をじっくり味わいたい方にも向いています。 後山へ行かなくても、山廬の魅力は十分に楽しめます。

コースB:後山まで歩く

蛇笏・龍太が暮らした土地を深く歩くコース

  • コースA → 竹林 → 狐川 → 後山 → 素堂の句碑・狐亭 → 丘の上
  • 所要時間の目安:1時間半〜2時間ほど
  • ふだんから歩く習慣がある方におすすめ

後山には登りだけでなく、帰りの下りもあります。 行きで体力を使い切らないようにしましょう。

どちらのコースにも共通する注意

  • 底がすべりにくい、歩きやすい靴がおすすめです
  • 夏は虫よけ、寒い時期は防寒を用意しましょう
  • 後山へ行く場合は、帰りの体力も残しておきましょう
  • もとは人の住まいです。静かに見学しましょう

5. 山廬で句を作るヒント

名句を作ろうと構えなくても大丈夫です。その日に見たものや聞いた音を、ひとつ句帳へ残してみましょう。

ヒント1:「遠く」と「足もと」を、両方見る

「芋の露」の句のように、まず遠くを見て、そのあと足もとへ目を移してみましょう。

大きな山と一枚の葉。 広い空と小さな石。 離れたものを並べるだけでも、句の入口になります。

ヒント2:家のなかの「もの」を詠む

机、柱、敷居、窓、座敷。 部屋全体ではなく、ひとつのものに目を向けます。

「古い家だった」ではなく、「柱に午後の日が当たっていた」と見れば、句の材料が具体的になります。

ヒント3:音を拾う

竹林を抜ける風、狐川の水音、遠くの鳥。 静かな場所では、小さな音がよく聞こえます。

少し立ち止まり、聞こえた音を三つほど句帳に書くのもおすすめです。

ヒント4:季節をそのまま受けとる

春なら芽吹きや竹の秋。 夏なら青葉や鳥の声。 秋なら露や澄んだ山なみ。 冬なら枯れた木々や遠山。

蛇笏も龍太も、この場所で何十年もの季節を見つづけました。

私たちが出会えるのは、その長い時間のなかの一日だけです。 その日に自分が見たものを詠めば、それで十分です。

竹林の風のとぎれて秋の水 (編集部作例)
縁側に句帳をひらく秋日和 (編集部作例)
山廬での吟行をイメージした、縁側に置かれた句帳と鉛筆、庭に下がる風鈴
縁側で句帳をひらく吟行のひととき(イメージ)

6. 山廬の開館時間・休館日・入館料と、石和温泉駅からのアクセス

山廬へは石和温泉駅から車で約15分です。電車で訪れる場合は、タクシーなどを組み合わせましょう。

飯田蛇笏・龍太記念館 ~俳句の聖地 山廬~

  • 所在地:山梨県笛吹市境川町小黒坂270-1
  • 開館時間:9:00〜16:00
  • 休館日:毎週水曜日(祝日の場合はその翌日)、12月28日〜1月5日
  • 入館料:大人300円/高校生・大学生200円/小学生・中学生100円
  • 俳諧堂(句会場)使用料:1時間500円

20人以上には団体料金も設定されています。 2026年9月時点の情報です。

おでかけ前には、笛吹市「飯田蛇笏・龍太記念館 ~俳句の聖地 山廬~」公式ページで最新情報をご確認ください。

アクセス

山廬は山あいにあり、石和温泉駅から徒歩で向かう場所ではありません。

山廬へのアクセス拠点となるJR石和温泉駅の外観
山廬へのアクセス拠点となるJR石和温泉駅

電車の場合
JR中央本線「石和温泉駅」から、タクシーなどを利用します。 車で約15分が目安です。

JR中央本線・石和温泉駅の駅名標。山廬を訪れる際の最寄り駅
山廬の最寄り駅となるJR中央本線・石和温泉駅

車の場合
中央自動車道「一宮御坂IC」から、車で約10分が目安です。

山廬文化振興会の公式サイトにも、石和温泉駅や車で訪れる方向けの案内があります。

帰りもタクシーを使う予定なら、往路で帰りの配車方法も確認しておくと安心です。

7. あわせて訪ねたい場所と、泊まる旅

山梨県立文学館や石和温泉を組み合わせれば、山廬を中心にした一泊二日の吟行も楽しめます。

山梨県立文学館(甲府市)

山廬とあわせて訪ねたいのが、甲府市の山梨県立文学館です。

常設展示の第4室には、「飯田蛇笏・飯田龍太記念室」があります。

山廬では「2人が暮らした場所」を見る。 文学館では、原稿や書画など「残された資料」を見る。

両方を巡ると、2人の俳人の姿がより立体的に見えてきます。

文学館のある芸術の森公園には、飯田蛇笏・飯田龍太の文学碑もあります。

石和温泉に泊まる

山廬の最寄り駅がある石和(いさわ)は、温泉地です。

東京方面からなら日帰りもできます。 ただ、一泊すると吟行の時間にゆとりが生まれます。

山廬を歩いた日の夜に、宿で句帳を開く。 翌日は甲府へ移動して、山梨県立文学館を見る。

そんな二日がかりの吟行もおすすめです。

よくある質問

山廬はいつから一般公開されていますか

2026年4月1日から、笛吹市の施設「飯田蛇笏・龍太記念館 ~俳句の聖地 山廬~」として通年で公開されています。 それ以前は、年に数回の公開日を中心に見学できる場所でした。

山廬の休館日と開館時間を教えてください

開館時間は9:00〜16:00です。

休館日は毎週水曜日(祝日の場合はその翌日)と12月28日〜1月5日です。 おでかけ前に公式サイトをご確認ください。

車がなくても山廬へ行けますか

はい。 最寄り駅はJR中央本線「石和温泉駅」です。

駅からタクシーなどを利用し、車で約15分が目安です。 公共交通で訪れる場合は、帰りの移動方法も先に確認しておくと安心です。

山廬で句会を開くことはできますか

できます。 俳諧堂の2階が句会場になっており、1時間500円で利用できます。

一般観覧以外の施設利用は申請が必要です。 原則として、利用日の6か月前から3日前までに申請します。

8. まとめ

山廬で持ち帰りたいのは、蛇笏と同じ句ではありません。その日に自分だけが見つけた風景です。

山廬は、大きな観光地ではありません。

ひとつの家があり、庭があり、竹林があり、川があり、裏山があります。

そこに暮らした蛇笏と龍太は、身近な自然や日々の暮らしを、何十年も俳句にしてきました。

特別な場所へ出かけなくても、句は生まれる。

山廬に立つと、そのことをあらためて感じられます。

蛇笏と同じ句を作る必要はありません。 庭の一本の木でも、竹を渡る風でも、水の音でもかまいません。

自分が山廬で見つけたものを、ひとつ句帳へ持ち帰ってみてください。

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