秋の彩りを詠む紅葉狩吟行ガイド|京都嵐山・日光・宮島の名所と、紅葉の句がありきたりにならない詠み方
俳句びと編集部
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紅葉を見に行くと、句が作りたくなります。けれども、できあがった句を読み返すと、「紅葉が美しい」「真っ赤な紅葉」と、どこかで見たような句になってしまう。そんな経験はないでしょうか。
紅葉は、あまりにも美しくて、あまりにも多くの人が詠んできた季語です。だからこそ、見方をひとつ変えるだけで、自分だけの句になります。
この記事では、紅葉の季語の使い分け、京都嵐山・日光・宮島の3つの紅葉名所の歩き方、そして、写真と一緒に句を詠むコツをご紹介します。
この記事でわかること
- 紅葉の句がありきたりになる理由と、その抜け出し方
- 「紅葉」「黄葉」「照葉」「散紅葉」など、紅葉の季語の使い分け
- 京都嵐山・日光・宮島の紅葉名所の見どころと歩き方
- 写真と一緒に句を詠むコツ
- 蕪村・芭蕉の紅葉と秋の名句
吟行がはじめての方は、先に「初心者でも楽しめる「吟行」入門ガイド」をお読みいただくと、持ち物や歩き方のコツが分かります。
1. 紅葉の句が、ありきたりになる理由
紅葉の句がありきたりになるいちばんの理由は、「紅葉」という言葉が、すでに「美しい」という意味を持っているからです。「紅葉が美しい」と書くと、「美しいものが美しい」と言っていることになり、句のなかに何も新しいものが残りません。
季語には、それまでに多くの人が積み重ねてきた季節感や景色があります。そのため、季語がすでに伝えていることを、句の中でもう一度説明する必要はありません。
紅葉なら、「赤い」「美しい」「鮮やか」といった言葉をいったん外してみましょう。そうすると、その代わりに何を書けばよいのかが見えてきます。
では、何を書けばよいのでしょうか。紅葉そのものではなく、紅葉のそばにあるもの、紅葉が変えたものを書くのです。
山暮れて紅葉の朱を奪ひけり 与謝蕪村
山に日が暮れていく。夕闇が、紅葉の朱い色を奪っていった。
蕪村は、紅葉の色の美しさそのものではなく、その色が消えていく瞬間を詠んでいます。
紅葉を見ているのに、紅葉が見えなくなっていくところを詠む。そんな視点があるからこそ、景色をただ「きれい」と説明する句とは違った味わいが生まれます。
紅葉を見たら、まず「きれい」と思って大丈夫です。そのあとで、「では、その紅葉のそばに何があっただろう」と、もう一歩だけ目を動かしてみてください。
風の音、川の音、足もとの落ち葉、日が陰った瞬間、遠くの人の声。そこに、自分だけの句の材料があります。
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2. 紅葉の季語を使い分ける
紅葉にまつわる季語は、たくさんあります。いつ、どんな紅葉を見たかで季語を選び分けるだけで、句がくっきりします。
- 薄紅葉(うすもみじ):秋。色づき始めの、まだ薄い紅葉
- 紅葉・もみじ:秋。赤く色づいた葉
- 黄葉(もみじ・こうよう):秋。黄色く色づいた葉
- 照葉(てりは):秋。日の光に照り映える紅葉
- 紅葉狩:秋。紅葉を見に山野へ出かけること
- 紅葉且つ散る(もみじかつちる):秋。紅葉しながら、同時に散ってもいる様子
- 散紅葉(ちりもみじ):冬。散った紅葉
- 冬紅葉:冬。冬になっても残っている紅葉
季語を選ぶときは「何色だったか」だけでなく、「いつ見たか」にも注目してみましょう。
色づき始めなら「薄紅葉」、光を受けて輝いていたなら「照葉」、散り始めていたなら「紅葉且つ散る」。季節が進み、散った葉を見たなら「散紅葉」というように、目の前の景色に合わせて言葉を選べます。
散紅葉と冬紅葉は冬の季語です。季節の終わりの紅葉には、盛りの紅葉とは違う、名残や静けさがあります。
季語を詳しく調べたい方は、 梅・紅葉など季語の一覧もあわせてご覧ください。
3. 3つの紅葉名所と歩き方
① 京都・嵐山(天龍寺と嵯峨野)
嵐山は、平安時代から貴族たちが紅葉を楽しんだ場所です。渡月橋の向こうに、嵐山の山肌が紅葉で染まります。
天龍寺は、嵐電の嵐山駅のすぐ前にある臨済宗の大本山です。曹源池庭園は、嵐山を借景にした池の庭で、池のほとりから庭と山を一緒に眺めることができます。
吟行で訪れたら、ぜひ水に映る紅葉にも目を向けてみてください。
紅葉そのものだけではなく、水面の揺れ、風が止まった瞬間、池に落ちた葉など、少し視点をずらすと句の材料が増えていきます。
嵐山の中心は、紅葉の時期はたいへん混みます。天龍寺の北側から竹林を抜けて、奥嵯峨の落柿舎や二尊院へ向かう歩き方もあります。
二尊院の参道は「紅葉の馬場」と呼ばれる紅葉の名所です。
紅葉の見ごろは年によって変わります。お出かけ前に、天龍寺や京都観光の公式情報で最新の紅葉情報をご確認ください。
② 日光(栃木県)
日光の紅葉は、標高の高いところから順に色づいていきます。奥日光の山々から、いろは坂、そして東照宮のある山内へと、紅葉が山を下りてくるのが特徴です。
そのため、同じ「日光の紅葉」でも、訪れる場所によって景色が変わります。
シニアの方が歩くなら、東照宮・輪王寺・二荒山神社のある日光山内を中心にする方法もあります。ただし、東照宮の境内には石段がありますので、歩く距離や体調に合わせて無理のないコースを選びましょう。
紅葉狩では、全部を見る必要はありません。
「今日はここまで」と決めて、一か所でじっくり景色を見るのも立派な吟行です。歩き続けるより、一つの景色を長く見ることで見えてくるものもあります。
芭蕉が日光で詠んだのは、夏の句
あらたふと青葉若葉の日の光 松尾芭蕉
『おくのほそ道』の旅で、芭蕉が日光に参拝したときの句です。
「日の光」に「日光」という地名がかけられているとされています。
芭蕉が日光を訪れたのは旧暦の4月、初夏のことでした。この句に詠まれているのも紅葉ではなく、青葉若葉です。
同じ日光の山を、芭蕉は青葉で詠み、私たちは紅葉で詠む。
季節が変われば、同じ場所でも目に入るものは変わります。芭蕉の句を知ったうえで日光を歩けば、「自分なら秋の日光をどう詠むか」と考えるきっかけにもなります。
③ 宮島・紅葉谷公園(広島県)
世界遺産の厳島神社がある宮島は、紅葉の名所としても知られています。厳島神社の裏手、弥山のふもとにある紅葉谷公園では、谷川や橋と紅葉が一緒に目に入ります。
宮島の紅葉の面白さは、海が近いことです。
山の紅葉だけを見るのではなく、海、空、鳥居、船、人の動きなどを一緒に見てみましょう。
紅葉の赤、海の青、鳥居の朱。ひとつの景色の中に複数の色があるため、紅葉だけを主役にしない句も作りやすい場所です。
宮島へはフェリーで渡ります。桟橋から紅葉谷公園までは歩いて向かいます。
紅葉の見ごろや園内の状況は年によって変わります。お出かけ前に廿日市市などの公式観光情報をご確認ください。
3つの名所に共通する注意
- 紅葉の見ごろの週末は混雑します。平日の朝早い時間など、比較的歩きやすい時間帯を選びましょう。
- 紅葉の季節の山は朝夕に冷え込みます。重ね着で調整できる服装がおすすめです。
- 落ち葉の積もった石段や坂は滑りやすくなります。下りは特に注意し、必要に応じて手すりを使いましょう。
- 写真を撮るときは周囲に注意しましょう。橋の上や石段の途中で立ち止まらないようにします。
4. 紅葉がありきたりにならない、詠み方のヒント
ヒント1:「赤い」「美しい」を使わない
紅葉という言葉のなかに、もう「赤い」「美しい」という印象があります。
この2つの言葉を、いったん句から抜いてみましょう。空いたところに、音、におい、手ざわり、時間など、実際に自分が感じたものを入れてみます。
ヒント2:色が変わる瞬間を詠む
蕪村の「山暮れて紅葉の朱を奪ひけり」のように、紅葉の色が変わる瞬間を探してください。
日が陰る。雲が通る。水に映る。夕暮れになる。
同じ紅葉でも、光が変わるだけで見え方は変わります。
ヒント3:散った紅葉、足もとの紅葉を詠む
木の上の紅葉は、多くの人が見ています。
そこで、足もとに散った一枚を見てみましょう。葉の裏、虫の穴、ぬれた石段に張りついた葉。上を見る人が多いところでは、下を見る。
ヒント4:紅葉以外のものを主役にする
紅葉の下を歩く人、紅葉を映す池の鯉、紅葉の中の鳥居、紅葉を背にしたお茶。
紅葉を背景に回して、別のものを主役にすると、紅葉そのものを説明しなくても、秋の景色が伝わります。
この道や行く人なしに秋の暮 松尾芭蕉
芭蕉の晩年の句です。
紅葉の名所では、人の多さに目が向きますが、少し道を外れると、静かな場所が見つかることがあります。
人のいない道、遠くから聞こえる声、夕方の光。そんな場所で、この句を思い出してみるのもよいでしょう。
5. 写真と一緒に句を詠む
紅葉狩では、写真を撮る方も多いでしょう。
写真と句を組み合わせると、句の作り方が少し変わります。
コツ1:写真に写っているものを、句で言わない
写真に紅葉が写っているなら、句で「紅葉が赤い」と書く必要はありません。
写真に写っていないものを句にしてみましょう。
音、におい、寒さ、そのときの気持ち、写真の外にあるもの。
たとえば、写真には山の紅葉しか写っていなくても、その場で聞こえていた川の音を句にすることができます。
谷川の音ばかりなる紅葉山 (編集部作例)
コツ2:写真は「寄り」、句は「引き」(またはその逆)
写真で一枚の葉に近づいて撮ったら、句では山全体や空を詠む。
逆に、写真で山全体を撮ったら、句では一枚の葉を詠む。
写真と句で、見ている距離を変えると、ひとつの作品に奥行きが出ます。
一枚の葉を撮った写真に、広い景色を想像させる句を合わせる方法もあります。
散紅葉拾へば空の高さかな (編集部作例)
コツ3:写真を撮ったあとで、カメラをしまう
写真を撮ると、それで満足してしまうことがあります。
写真を撮ったら、一度カメラやスマートフォンをしまって、1分間、その景色を目で見てください。
写真には写らなかったものが、見えてきます。
風の冷たさ、葉の音、遠くの鐘、人の話し声、足もとの感触。
その一つを拾って、五・七・五に置いてみましょう。
写真と俳句は、同じものを説明する必要はありません。
写真が「見たもの」を残し、俳句が「感じたもの」を残す。そう考えると、写真俳句が作りやすくなります。
6. 天龍寺・日光東照宮・厳島神社の施設情報とアクセス
天龍寺(京都市右京区)
| 拝観時間 | 8:30〜17:00(受付終了16:50) |
|---|---|
| 休み | 年中無休 |
| 拝観料 | 庭園(曹源池・百花苑)高校生以上500円/小中学生300円(諸堂の参拝は300円追加) |
| アクセス | 嵐電「嵐山駅」下車すぐ、JR「嵯峨嵐山駅」から徒歩約13分 |
日光東照宮(栃木県日光市)
| 拝観時間 | 9:00〜17:00(4月1日〜10月31日)/9:00〜16:00(11月1日〜3月31日)。受付終了は30分前 |
|---|---|
| 休み | 年中無休 |
| 拝観料 | 大人・高校生1,300円/小中学生450円 |
| アクセス | JR日光線「日光駅」または東武日光線「東武日光駅」から東武バスで「神橋」または「表参道」下車、徒歩約5〜10分 |
厳島神社・紅葉谷公園(広島県廿日市市)
| 拝観時間 | 6:30〜18:00(季節により閉門時間が17:00〜18:00に変動) |
|---|---|
| 休み | 年中無休 |
| 昇殿初穂料 | 大人300円/高校生200円/小中学生100円(紅葉谷公園は入園無料) |
| アクセス | 宮島口桟橋からフェリーで約10分「宮島桟橋」下車、徒歩約15〜20分 |
※お出かけ前に各施設の公式サイトで、開館時間・休館日・料金・交通情報をご確認ください。
7. 紅葉狩の旅に出かける
紅葉の季節は、一年で旅行の多い季節のひとつです。宿や交通は、早めの手配がおすすめです。
- 京都:嵐山のあとは、東山の南禅寺・永観堂・哲学の道、洛北の金福寺などを訪ねる旅に。
- 日光:鬼怒川温泉や、奥日光の中禅寺湖・湯元温泉に泊まる旅もあります。
- 宮島:宮島に泊まれば、夜や早朝の静かな時間に紅葉を楽しむ旅もできます。
京都方面をさらに歩いてみたい方は、 哲学の道の記事や 金福寺の記事もあわせてご覧ください。
個人で計画を立てるのが不安な方は、添乗員が同行するツアーを使う方法もあります。
よくある質問
紅葉の俳句が、ありきたりになってしまいます。どうすればいいですか
「赤い」「美しい」という言葉を使わずに、紅葉の色が変わる瞬間、足もとに散った一枚、紅葉のそばにある別のものを詠んでみてください。
紅葉という季語が持っている季節感を、句のなかでもう一度説明する必要はありません。音、におい、寒さ、人の動きなど、自分がその場で感じたものに目を向けてみましょう。
紅葉の季語には、どんなものがありますか
秋の季語に「薄紅葉」「紅葉」「黄葉」「照葉」「紅葉狩」「紅葉且つ散る」、冬の季語に「散紅葉」「冬紅葉」などがあります。
見た時期と紅葉の様子によって使い分けると、句がくっきりします。
写真と一緒に俳句を詠むコツはありますか
写真に写っているものを句で説明するのではなく、写真に写っていないものを詠んでみましょう。
写真で近くを撮ったら句では遠くを、写真で遠くを撮ったら句では近くを詠む、と距離を変える方法もあります。
芭蕉は日光で、紅葉の句を詠みましたか
芭蕉が日光で詠んだ「あらたふと青葉若葉の日の光」は、紅葉ではなく、初夏の青葉の句です。
『おくのほそ道』の旅で、旧暦の4月に日光を訪れたときの句とされています。
8. まとめ
紅葉は、誰もが美しいと知っている季語です。
だからこそ、「美しい」と書かずに、何を書くかが、句の分かれ道になります。
色が消えていく夕暮れ、足もとの一枚、写真には写らなかった音。
今年の秋は、紅葉を見上げたあとで、一度、足もとを見てください。そして、写真を撮ったら、カメラをしまって、1分間、目で見てください。
「何を見たか」だけでなく、「そのとき何を感じたか」を一つだけ拾ってみましょう。
それだけでも、誰かの句ではない、自分の紅葉の句に近づいていきます。
吟行の持ち物や歩き方のコツは、 初心者でも楽しめる「吟行」入門ガイド でご紹介しています。
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吟行で生まれた句は、その日の風や光がそのまま入った一句です。
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