春を告げる観梅吟行おすすめスポット全国版|水戸偕楽園・北野天満宮・太宰府天満宮
俳句びと編集部
執筆者

梅一輪一輪ほどの暖かさ 服部嵐雪
梅が一輪ひらいた。その一輪ぶんだけ、暖かくなった気がする。寒さのなかに、春のはじまりを見つけた喜びが、そのまま句になっています。
梅は、桜よりもひと足早く、まだ寒い季節に咲く花です。そのため、古くから「春告草(はるつげぐさ)」とも呼ばれてきました。俳句をする人にとって、梅は、一年の句作のはじまりを告げる花でもあります。
この記事では、梅を詠んだ名句と、観梅吟行におすすめの3つの名所をご紹介します。東日本の水戸・偕楽園、近畿の京都・北野天満宮、九州の太宰府天満宮。お住まいの地域から、行きやすい一か所を選んでください。
この記事でわかること
- 梅を詠んだ名句3句と、その味わい方
- 「探梅」「観梅」など、梅にまつわる季語
- 偕楽園・北野天満宮・太宰府天満宮の見どころと歩き方
- 菅原道真と梅の物語(「東風吹かば」と飛梅)
- 梅を詠むヒント
吟行がはじめての方は、先に「初心者でも楽しめる「吟行」入門ガイド」をお読みいただくと、持ち物や歩き方のコツが分かります。
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1. 梅を詠んだ名句
梅一輪一輪ほどの暖かさ 服部嵐雪
服部嵐雪(はっとり らんせつ)は、芭蕉の門人のひとりで、蕉門十哲に数えられる俳人です。
「一輪」という言葉を二度くり返すことで、ひとつ咲くごとに、ほんの少しずつ暖かくなっていく感じが出ています。
この句は、「梅が一輪咲いた、その一輪ぶんだけ暖かくなった」と読むこともできます。一方で、一輪の梅から感じられる、ほんのかすかな暖かさを詠んだ句と見ることもできます。
ひとつの読み方に決めつけず、実際に梅を見ながら、自分にはどちらの感じが近いか考えてみるのも面白いでしょう。
梅が香にのつと日の出る山路かな 松尾芭蕉
梅の香りのただよう山道を歩いていると、ぬっと朝日が顔を出した。「のつと」という、少しおどけた言葉が、朝日の出てくる大きさと唐突さを伝えています。
梅そのものだけでなく、香り、山道、そして日の出までが一つの景色になっています。梅の花を見たときは、花だけを見るのではなく、周囲の音や光、風、香りにも目を向けてみたいものです。
芭蕉の晩年の句とされています。
白梅に明る夜ばかりとなりにけり 与謝蕪村
蕪村の辞世とされる句のひとつです。
これからは、白梅のほうから夜が明けていくばかりになった。死を前にして、白い梅の花に、夜明けの光を見ています。
白梅を見たとき、その白さだけでなく、そこに差してくる光や、まだ残る冬の夜気まで感じ取ると、この句の世界が少し近く感じられるかもしれません。
服部嵐雪の俳人ページ、松尾芭蕉の俳人ページ、与謝蕪村の俳人ページもあわせてご覧ください。
2. 梅にまつわる季語
梅は春の季語です。ほかにも、梅にまつわる季語がたくさんあります。
- 探梅(たんばい):冬の季語。まだ咲き始めの梅を、早春の山野に探しに行くこと
- 観梅・梅見:春の季語。咲いた梅を見に行くこと
- 白梅・紅梅:春の季語。白い梅と紅い梅
- 梅が香:春の季語。梅の香り
- 春告草:春の季語。梅の別名
- 東風(こち):春の季語。春に東から吹く風
探梅は冬の季語、観梅は春の季語です。
同じ梅を見に行くのでも、いつ行くかで季語が変わります。咲き始めのころに出かけるなら「探梅」、見ごろに出かけるなら「観梅」を使ってみてください。
梅の季語、探梅の季語、観梅の季語、白梅の季語、紅梅の季語、梅が香の季語、東風の季語も参考にしてみてください。
3. 水戸・偕楽園(茨城県)― 東日本の梅の名所
偕楽園(かいらくえん)は、江戸時代の終わり、水戸藩主の徳川斉昭が開いた庭園で、金沢の兼六園、岡山の後楽園とともに「日本三名園」のひとつに数えられています。
斉昭が、藩の人々とともに楽しむ場として、身分を問わずに開放したことから、「偕(とも)に楽しむ」という名がつけられたとされています。
園内には、およそ100品種・3,000本の梅が植えられているとされ、毎年早春に「水戸の梅まつり」が開かれます。
梅の品種や本数、梅まつりの期間は年によって変わるため、お出かけ前に公式サイトで最新情報を確認しましょう。
園内は広く、梅林は平らな場所が多いです。 斉昭が建てた好文亭(こうぶんてい)からは、梅林と千波湖(せんばこ)を見わたせます。
好文亭を見学するときは、階段に注意しましょう。
上の階へ上がる場合など、階段があります。足もとに不安がある方は、無理のない範囲で見学しましょう。
梅まつりの期間中の土日祝日には、JR常磐線に「偕楽園臨時駅」が開設されます。
広い梅林を歩きながら、気になった一輪を見つけて立ち止まる。偕楽園では、そんなゆったりした吟行を楽しめます。
4. 京都・北野天満宮 ― 道真と梅
北野天満宮は、学問の神さま・菅原道真をまつる、全国の天満宮の総本社のひとつです。
道真が梅を愛したことから、境内には多くの梅があり、「梅苑」として早春に公開されます。
梅の種類や本数、梅苑の公開期間は年によって変わるため、観梅に出かける際は北野天満宮の公式サイトで最新情報を確認してください。
道真と「東風吹かば」
道真は、平安時代の学者で政治家でした。右大臣にまでなりましたが、無実の罪で九州の大宰府へ左遷されます。
京を去るとき、屋敷の梅に向かって詠んだとされるのが、次の歌です。
東風吹かば匂ひおこせよ梅の花
あるじなしとて春な忘れそ 菅原道真
東風が吹いたら、その香りを、遠い大宰府まで届けておくれ、梅の花よ。主人がいないからといって、春を忘れてはならないよ。
この歌から、京都の梅と太宰府の梅が一つの物語としてつながっていきます。
北野天満宮では、梅そのものだけでなく「道真と梅」という物語にも目を向けてみましょう。
花を見ながら、その背景にある歌や歴史を思い出すと、吟行の景色が少し深くなります。
5. 太宰府天満宮(福岡県)― 飛梅の伝説
道真は、大宰府に流されて2年後、延喜3年(903年)にこの地で亡くなりました。その墓所の上に建てられたのが、太宰府天満宮です。北野天満宮とともに、全国の天満宮の総本社とされています。
本殿の右側にある梅の木が、「飛梅(とびうめ)」です。道真が都を去ったあと、主人を慕った屋敷の梅が、一夜のうちに大宰府まで飛んできた、と伝えられています。
北野天満宮で「東風吹かば」の歌を思い、太宰府天満宮で飛梅を見る。
京都と九州、ふたつの天満宮は、ひとつの物語でつながっています。
境内には多くの梅があるとされ、参道には名物の「梅ヶ枝餅」の店が並んでいます。
梅の種類や本数、見ごろの時期は年によって変わります。お出かけ前に太宰府天満宮の公式サイトで最新情報をご確認ください。
6. 観梅吟行の歩き方(シニア向け)
3つの名所の歩きやすさ
| 名所 | 歩きやすさ | 所要時間の目安 |
|---|---|---|
| 偕楽園 | 平らな梅林が多い。好文亭に階段あり | 2〜3時間 |
| 北野天満宮 | 境内は平ら。梅苑は有料エリア | 1時間半〜2時間 |
| 太宰府天満宮 | 参道は平ら。境内に太鼓橋(反りのある橋)あり | 2〜3時間(参道を含む) |
実際の段差や坂の状況は、訪問時期や工事などによって変わる場合があります。足もとに不安がある方は、出発前に各施設の公式情報をご確認ください。
共通する注意
- 梅の季節は、まだ寒い季節です。 風のある日は、思った以上に冷えます。重ね着や手袋など、防寒の準備をして出かけましょう。
- 見ごろの土日は、たいへん混みます。 混雑を避けたい方は、平日の午前中など、比較的ゆっくり歩ける時間を選びましょう。
- 梅の枝には触れないでください。 花や枝を折らず、景色を大切に楽しみましょう。
- 足もとがぬかるんでいることがあります。 雨のあとは、歩きやすい靴を選びましょう。
- お手洗いは、各名所の施設案内を事前に確認しておくと安心です。
吟行では、全部を見ようとしなくても大丈夫です。
梅林を端から端まで歩くより、途中で何度か立ち止まり、一輪の梅をじっくり見る時間を作ってみましょう。
7. 梅を詠むヒント
ヒント1:一輪だけを見る
梅林ぜんたいを見ると、「きれい」で終わってしまいます。嵐雪のように、一輪だけを見てください。
咲いたばかりの一輪、まだつぼみの一輪、散りかけの一輪。
同じ梅でも、一輪だけをじっと見ていると、それぞれ違った表情が見えてきます。
ヒント2:香りを詠む
梅は、香りの花です。芭蕉の「梅が香に」のように、目で見る前に、香りで気づくことがあります。
立ち止まって、少し目を閉じてみましょう。どこから香ってくるのか、風向きはどうなのか。目に見えないものを感じるのも、観梅吟行の楽しみです。
ヒント3:寒さと暖かさを並べる
梅は、寒いなかに咲く花です。冷たい風、白い息、凍えた指と、咲いた梅。
寒いものと暖かいものを並べると、梅の句らしくなります。
「梅」だけを詠まなくても大丈夫です。
梅を見たときの手の冷たさ、茶屋から聞こえる声、梅の香り、足もとの土、帰り道の夕日。梅をきっかけに感じたものを、一つ選んでみましょう。
ヒント4:探梅と観梅を使い分ける
咲き始めのころなら「探梅」、見ごろなら「観梅」。自分がいつ出かけたかで、季語を選んでください。
同じ場所に、咲き始めと見ごろの二度出かけて、両方の句を作るのもおすすめです。
作例
探梅のひとつ見つけて日の暮るる (編集部作例)
梅が香や茶屋の湯気まで白くして (編集部作例)
8. 偕楽園・北野天満宮・太宰府天満宮の施設情報とアクセス
偕楽園(茨城県水戸市)
- 開園時間: 6:00〜19:00(2月中旬〜9月30日)/7:00〜18:00(10月1日〜2月中旬)
- 休み: 年中無休(好文亭は年末年始休館)
- 入園料: 本園 大人300円/小中学生150円/茨城県内在住の70歳以上は無料(好文亭は大人200円、別料金)
- アクセス: JR常磐線「水戸駅」北口からバスで約20分「偕楽園前」下車。梅まつりの期間中の土日祝日は「偕楽園臨時駅」が開設されます
北野天満宮(京都市上京区)
- 開門時間: 7:00〜17:00(社務所・授与所は9:00〜17:00)
- 休み: 年中無休(梅苑の公開は例年1月下旬〜3月下旬)
- 料金: 境内の参拝は無料(梅苑・宝物殿は有料)
- アクセス: JR「京都駅」から市バス50・101系統「北野天満宮前」下車すぐ
太宰府天満宮(福岡県太宰府市)
- 開門時間: 6:30〜19:00(季節・曜日により6:00〜19:30に変動)
- 休み: 年中無休
- 料金: 境内の参拝は無料
- アクセス: 西鉄太宰府線「太宰府駅」から徒歩約5分
施設情報について
開園・開門時間、休館日、料金、交通情報などは変更される場合があります。お出かけ前に各施設の公式サイトで最新情報をご確認ください。
9. 梅の旅に出かける
梅の季節は、冬の終わりの、旅行の少ない時期です。そのぶん、宿も観光地も、桜の季節ほどは混みません。
- 水戸:梅まつりとあわせて、水戸周辺の観光を楽しむ旅に
- 京都:北野天満宮のあとは、金福寺の蕪村の墓(洛北)や、落柿舎(嵯峨野)へ
- 太宰府:太宰府天満宮のあとは、博多や二日市温泉で一泊を
個人で計画を立てるのが不安な方は、添乗員が同行するツアーを使う方法もあります。梅の名所をめぐるツアーは、毎年早春に多く組まれます。
よくある質問
梅を詠んだ有名な俳句を教えてください
服部嵐雪の「梅一輪一輪ほどの暖かさ」、松尾芭蕉の「梅が香にのつと日の出る山路かな」、与謝蕪村の「白梅に明る夜ばかりとなりにけり」などがよく知られています。
「探梅」と「観梅」の違いは何ですか
「探梅」は、まだ咲き始めの梅を探しに行くことで、冬の季語です。「観梅」は、咲いた梅を見に行くことで、春の季語です。出かける時期によって使い分けます。
梅の見ごろはいつですか
名所や年によって異なりますが、例年、太宰府天満宮と北野天満宮は1月下旬から、偕楽園は2月中旬ごろから見ごろを迎えます。
ただし、開花状況はその年の気候によって変わります。おでかけ前に、各名所の公式サイトで開花情報をご確認ください。
「飛梅」とは何ですか
太宰府天満宮の本殿の右側にある梅の木です。菅原道真が京都から大宰府へ左遷されたとき、道真を慕った屋敷の梅が、一夜のうちに大宰府まで飛んできた、と伝えられています。
10. まとめ
梅は、一年でいちばん早く、春を告げる花です。
寒さのなかに一輪ひらいた梅に、嵐雪は暖かさを、芭蕉は朝日を、蕪村は夜明けを見ました。
今年の早春は、どこか一か所、梅の名所へ出かけてみてください。梅林ぜんたいではなく、一輪だけを見て、その一輪ぶんの春を、一句にしてください。
まずは一句、完成させなくても大丈夫です。
気になった梅を見つけたら、感じたことを句帳に一つだけ書いてみましょう。家に帰ってから言葉を整えるのも、吟行の楽しみです。
吟行の持ち物や歩き方のコツは、「初心者でも楽しめる「吟行」入門ガイド」でご紹介しています。
詠んだ句を、誰かに読んでもらいませんか
吟行で生まれた句は、その日の風や光がそのまま入った一句です。
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