1942年 - ?

角川春樹

かどかわ はるき

作風・特徴

有季定型の伝統を守りながら実業家・映像プロデューサーとして歩んだ人生の重みが句に深みを与える。昭和の時代感覚と自然への真摯な向き合いが共存する骨格のしっかりとした句風。

生涯・略歴

角川 春樹(かどかわ はるき、1942年〈昭和17年〉1月8日 - )は、日本の編集者、実業家、映画監督、俳人、宗教家。角川源義の長男で、株式会社角川春樹事務所代表取締役社長、宗教法人明日香宮宮司、俳句結社「河」主宰を務める。角川書店の二代目社長を務め、今日のKADOKAWA、角川映画の礎を築く。

代表句 (12件)

向日葵や信長の首切り落とす
季語: 向日葵 (summer)
流され王
逆髪の狂ひたまへる秋の風
季語: 逆髪忌 (autumn)
【現代語訳】気高き皇女である逆髪が狂乱のままにさ迷われた、その激しさを今に伝えるかのように秋の風が吹き荒れている。 【鑑賞】「狂ひたまへる」という敬語の用い方に、高貴な生まれでありながら過酷な狂気に翻弄された逆髪への畏敬と哀憐が込められています。秋風の激しさと謡曲の幽玄なドラマ性を力強く響かせた一句です。
刺羽渡る天の底まで風満ちて
季語: 刺羽 (autumn)
【現代語訳】刺羽が渡っていく。どこまでも高い秋の空の底深くまで、強い風が満ちわたっている。\n【鑑賞】「天の底」という大胆で立体的な把握が際立つ句です。大空を渡る刺羽の飛翔と、天界を満たす力強い風の気配が一体となり、秋の高い空の透明感とスケールの大きさを余すところなく伝えています。
四十雀雁頬の白きを揃へ飛ぶ
季語: 四十雀雁 (autumn)
【現代語訳】四十雀雁たちが、特徴である頬の白い斑紋をきれいに揃えるようにして群れ飛び渡っていく。\n【鑑賞】四十雀雁の最も際立つ特徴である「頬の白さ」に鋭く着目した一句です。整然と飛ぶ群れの姿と、白い模様の鮮やかさが秋の青空に美しく映え、渡り鳥の力強さと可憐さが同時に描き出されています。
秋思祭わが魂魄の透きとほる
季語: 秋思祭 (autumn)
【現代語訳】秋思祭の今日、自分自身の魂までもが澄み渡り、透明に透き通っていくようだ。 【鑑賞】「魂魄(こんぱく)」という重みのある言葉を「透きとほる」と結ぶことで、赤黄男の持つ冷徹で澄み切った詩精神に感応する自己の心境を鮮烈に詠み上げています。
ねぶた狂ひて地の果に海あること忘る
季語: ねぶた祭 (autumn)
【現代語訳】ねぶたの熱狂に我を忘れて狂乱し、この陸地の果てにすぐ海が広がっていることさえ忘れてしまっている。【鑑賞】本州の最北端・青森の地理的背景を効果的に詠み込んだ一句です。祭りの渦中にいる熱気と陶酔感が、すぐそこにある冷たい海という現実を忘れさせるほどの力を持っていることを力強い言葉で描いています。
蟄虫咸俯す水落つる音遠くして
季語: 蟄虫咸俯す (autumn)
【現代語訳】生きとし生ける虫たちが土中に伏して静まる頃、遠くで水が流れ落ちる微かな音だけが澄んだ空気に響いている。【鑑賞】虫たちの鳴き声が途絶え、静寂が訪れたからこそ、遥か彼方の水音が鮮明に耳に届きます。動から静へと移り変わる秋の深まりを聴覚を通じて清冽に描出した一句です。
鳥風に水引草の朱の走る
季語: 鳥風 (autumn)
【現代語訳】渡り鳥を導く秋風が吹き渡り、その風に揺れて水引草の鮮やかな赤い花穂が風の軌跡のように走る。【鑑賞】目に見えない「風」を、細く繊細な水引草の赤い穂の揺れによって鮮やかに可視化しています。秋の冷涼な大気と、草の朱色の鮮烈なコントラストが美しく印象的な作品です。
月夜茸死ねば青き火となりなむ
季語: 月夜茸 (autumn)
【現代語訳】月夜茸の光を見ていると、自分が死んだ後にはこのような青い火になるのだろうかと思われる。 【鑑賞】月夜茸の放つ冷ややかで妖しい燐光に、自らの魂や死後の炎を重ね合わせた情念の一句です。毒きのこが持つ死の匂いと神秘的な美しさが、作者の鋭い死生観と見事に溶け合っています。
蜻蛉朔日赤きをとめの群れて来し
季語: 蜻蛉朔日 (autumn)
【現代語訳】蜻蛉朔日のこと、赤い着物をまとった少女たちが群れをなしてやって来た。\n【鑑賞】「赤きをとめ」の鮮烈な赤色が、群れ飛ぶ赤とんぼのイメージと鮮やかに重なり合います。八朔の日に催される祭りや神事の華やぎを思わせるとともに、どこか幻想的で神話のような物語性を感じさせる妖艶で美しい一句です。
跳人らの鈴の飛び散る舗道かな
季語: 跳ね人 (autumn)
【現代語訳】跳ね人たちが激しく地を蹴って乱舞する舗道には、衣装からちぎれ飛んだ鈴が散らばっていることだ。【鑑賞】激しいステップの振動によって、跳ね人の腰から無数の鈴がアスファルトの舗道へこぼれ落ちていく光景を描いています。躍動感あふれる祭りの最高潮の勢いと、鈴の金属音、そして散乱するきらめきが映像的に目に浮かぶ一句です。
万聖節暮れて海より風の来る
季語: 万聖節 (autumn)
【現代語訳】万聖節の夕暮れが訪れ、海の方から冷ややかな風が吹き寄せてくる。【鑑賞】すべての聖人を記念する祝日が暮れゆくとき、広大な海から吹き抜けてくる晩秋の風を描いています。どこか霊性を感じさせる冷風と夕闇の広がりが、厳粛な余韻を残します。