逆髪忌

逆髪忌

さかがみき

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意味・由来

「逆髪忌(さかがみき)」は、能(謡曲)の『蝉丸』に登場する盲目の皇子・蝉丸の姉である「逆髪(さかがみ)」を偲ぶ秋の季語です。逆髪は髪が天に向かって逆立つ奇病に冒され、狂気の発作を抱えて諸国を放浪した悲劇の皇女です。逢坂山(おうさかやま)に庵を結ぶ弟・蝉丸と偶然再会し、互いの過酷な運命を慰め合いながら再び別れていく物語が語り継がれています。蝉丸忌(旧暦八月十五日頃)とともに、秋の風が吹き抜ける逢坂山の寂寥感や、狂気と気品を併せ持った女性の悲哀を象徴する忌日として詠まれます。

この季語で詠むコツ

「逆髪」という特異な名が示す通り、激しい風に乱れる髪や、秋風の荒々しさと結びつけて詠まれることが多い季語です。逢坂山の関所、琵琶の音、狂気の中にある気品や悲しみといった能の劇的な背景を取り入れると深みが増します。単に悲愴感に流されるだけでなく、秋の澄んだ空気や山を渡る風の鋭さを際立たせるように詠むのがコツです。

相性のいい言葉・取り合わせ

・地名・情景:逢坂山、逢坂関、関寺、琵琶湖、山風、峠 ・五感の描写:野分(のわき)、一陣の風、琵琶の音、乱れ髪、薄(すすき) ・心情表現:狂気、流浪、孤高、別離、もののあはれ

逆髪忌」の俳句例 (3件)

逆髪の影ひきつれて蝉丸忌
安住敦【現代語訳】蝉丸の忌日に、放浪の姉である逆髪の狂乱の面影をも連れ添うようにして秋風が吹き過ぎてゆく。 【鑑賞】盲目の蝉丸と狂女となった逆髪という、過酷な宿命を背負った姉弟の絆と悲哀を深く捉えた名句です。「影ひきつれて」という表現に、逢坂山で寄り添い、そして別れていった二人の孤独が鮮やかに浮かび上がります。
逆髪の髪梳く風や蝉丸忌
詠み人知らず【現代語訳】天に逆立つ逆髪の乱れ髪を、激しくも優しく梳かし整えるかのように秋風が吹き抜ける、今日は蝉丸の忌日である。 【鑑賞】逆髪の激しい髪の描写と、山を吹き渡る秋風の感触を見事に重ね合わせた句です。「髪梳く風」という詩的な見立てにより、悲運の皇女に対する哀憐と美しさが際立ちます。
逆髪の狂ひたまへる秋の風
角川春樹【現代語訳】気高き皇女である逆髪が狂乱のままにさ迷われた、その激しさを今に伝えるかのように秋の風が吹き荒れている。 【鑑賞】「狂ひたまへる」という敬語の用い方に、高貴な生まれでありながら過酷な狂気に翻弄された逆髪への畏敬と哀憐が込められています。秋風の激しさと謡曲の幽玄なドラマ性を力強く響かせた一句です。

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