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意味・由来 鴇(とき)は、トキ科の美しい鳥であり、その極めて優美な淡い桃色の羽から「鴇色(ときいろ)」という日本の伝統色名が生まれました。かつては日本各地の里山で普通に見られましたが、乱獲や環境変化によって野生絶滅の危機に瀕し、現在では佐渡などで厳重に保護・放鳥されている特別な存在です。秋の季語とされている背景には、刈り入れを終えた静かな秋の田んぼに降り立つ姿や、澄み切った秋の夕空を背景に優雅に舞い飛ぶ姿が、日本の伝統的な秋の美を強く象徴していることがあります。 ### この季語で詠むコツ 鴇を句に詠み込む際は、やはり特徴的な「鴇色の羽」が持つ儚さと温かみをどう表現するかがポイントになります。ただ色を写生するだけでなく、秋の冷ややかな空気感や、夕暮れの斜光、あるいは静まり返る景色のなかで、その淡い色彩がどのように映えるかを意識すると効果的です。また、この鳥が辿ってきた絶滅と再生の歴史、あるいは容易には出逢えないという希少性がもたらす「寂寥感」や「祈り」のような感情を背景に忍ばせることで、作品に深い奥行きが生まれます。 ### 相性のいい言葉・取り合わせ ・色彩を引き立てる言葉(夕日、夕暮、あかね、茜雲、白雲) ・秋の情緒を高める言葉(風、寂し、影、静けさ、遙か) ・生息地や自然の背景(佐渡、刈田、棚田、大空、潮騒)

」の俳句例 (3件)

鴇の羽のうすくれなゐに秋の風
芝不器男【現代語訳】鴇の羽のような、淡い紅色に優しく染まる空に、どこか物寂しい秋の風が吹き渡っている。 【鑑賞】作者の若き感性が光る名作です。目に見えない「秋の風」を、鴇の羽が持つ繊細で儚い色彩である「うすくれなゐ」と重ね合わせることで、五感に染み渡るような寂静と美を表現しています。
鴇飛ぶや佐渡の夕雲あかねさし
水原秋桜子【現代語訳】鴇が静かに飛び立っていく。佐渡の空に広がる夕暮れの雲は、美しく茜色に照り映えている。 【鑑賞】佐渡の地を象徴する鴇を、茜色に染まる夕雲という壮大な自然のキャンバスに描き出した、極めて絵画的でスケールの大きな一句です。鴇の羽の色と、あかねさす夕光が見事に調和しています。
鴇の羽のいろにつつまれて死なまし
山口青邨【現代語訳】鴇の羽が持つ、あの優しくも儚い淡桃色に優しく包まれながら、私はいつの日か静かに生を終えたいものだ。 【鑑賞】鴇色という色の究極の美しさに心を奪われ、自らの死生観を託した情熱的かつロマンチックな句です。単なる自然描写を超えて、自然の美と自己の精神を一体化させようとする祈りが込められています。

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