残る蟬

残る蟬

のこるせみ

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意味・由来\n「残る蟬(のこるせみ)」とは、秋の気配が深まり、大半のセミが命を終えて死に絶えた後も、なお生き残って鳴いているセミのことです。夏の盛りには耳を塞ぎたくなるほど騒がしかった蝉時雨が嘘のように消え去り、澄んだ秋風の中でぽつりぽつりと途切れがちに鳴く声には、独特の哀愁や無常感が漂います。夏の終わりを惜しむ感情と、迫り来る寒さに向き合う生き物の切なさが重なり合う、初秋から仲秋にかけての情趣深い三秋の季語です。\n\n### この季語で詠むコツ\n「残る蟬」を詠む際は、夏のセミのような勢いや暑苦しさを描くのではなく、「寂寥感」や「命の灯火の儚さ」に焦点を当てることがポイントです。声の細さ、鳴きやんだ後のふとした静寂、あるいは影の長くなった夕暮れの光など、周囲の秋らしい環境と対比させることで季語の持つ情緒がぐっと際立ちます。また、弱々しい声だけでなく、去りゆく季節に抗うかのように力を振り絞って鳴く姿に人間味や人生の黄昏を重ねて描くのも効果的です。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n・聴覚・静寂を強調する言葉(「静寂」「ひびく」「とぎれ」「かすか」)\n・秋の光や影を表す言葉(「夕暮」「秋日」「長き影」「木漏れ日」)\n・場所や自然の描写(「寺苑」「古道」「松風」「梢」)

残る蟬」の俳句例 (3件)

残る蝉山はいよいよ静かなり
内藤丈草【現代語訳】一匹の残る蝉がか細く鳴いている。その声がかえって、山の静けさをいっそう深めていることだ。\n【鑑賞】蕉門十哲の一人である丈草の代表句です。蝉の声が消えゆく季節の山の静寂を、わずかに残った蝉の一声が際立たせています。「静けさや岩にしみ入る蝉の声」に通じる、動によって静を表現する侘び寂びの精神が凝縮された名句です。
鳴き立てて残る蝉とは思はれず
高浜虚子【現代語訳】勢いよく激しく鳴き立てていて、秋になっても生き残った蝉の声とはとても思えないほどである。\n【鑑賞】秋の蝉の鳴き声は一般に弱々しいものとされますが、虚子はその予想を覆し、夏さながらに懸命に声を張り上げる蝉の姿を客観的に捉えました。命を振り絞るかのような力強い生命感への驚きと、どこかユーモラスな観察眼が光る一句です。
残る蝉一つ鳴くにも耳立ちぬ
松本たかし【現代語訳】秋となり静まり返った中で、残る蝉がただ一匹鳴いたその声にも、思わず耳をそばだててしまった。\n【鑑賞】夏の盛りには聞き流していた蝉の声も、秋になって孤独に響く一筋の声となると、人の心を強く引きつけます。張り詰めた秋の気配と、消えゆく命の最後の叫びを聞き逃すまいとする作者の鋭敏な感覚が見事に表現されています。

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