熊栗架を搔く
autumn 生活

熊栗架を搔く

くまくりだなをかく

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意味・由来

「熊栗架を搔く(くまくりだなをかく)」は、秋が深まり冬眠を間近に控えた熊の、野生の営みを生き生きと捉えた極めて野趣に富む季語です。「栗架(くりだな)」とは「熊棚(くまだな)」のことで、熊がナラやクリなどの木に登って実を食べる際、食べた後の枝を折ってお尻の下に敷き重ね、まるで棚のような足場を作ったものを指します。熊がその棚をこしらえるために、バリバリと勢いよく枝を搔き寄せる様子を「栗架を搔く」と言います。厳しい冬を生き抜くための、命の逞しさと大自然の厳粛さを感じさせる言葉です。

この季語で詠むコツ

現代では実景を見ることは稀であるため、想像力を駆使して山奥のダイナミックな気配を描写するのがコツです。静まり返った山中に響く「メキメキ」という枝の折れる音や、木々の不穏な揺れなど、聴覚や動的な描写を取り入れると効果的です。また、主である熊が去った後にぽつんと残された「棚」の跡に焦点を当て、冬を前にした山の寂寥感や畏怖を詠み込むのも良いアプローチです。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 動的・聴覚的な言葉:枝折る(しおる)、夜半の音、とどろく、風の音
  • 深山の情景:月影、霧、木枯らし、谷深し、岩肌、夜を寒み

熊栗架を搔く」の俳句例 (3件)

熊棚に風吹きおこる日暮かな
飯田蛇笏【現代語訳】熊が栗の実などを貪り食った名残である熊棚のあたりに、日が暮れると同時に冷たく激しい風が吹き起こってきたことだ。 【鑑賞】深山幽谷の厳しい自然を捉えた名句です。人知れぬ山奥で、野生の気配が色濃く残る熊棚と、夕暮れ時の荒涼とした風の対比が、見る者に大自然への強い畏怖を感じさせます。
熊棚や一山くらす雲のゆき
大野林火【現代語訳】見上げると木の上に熊棚が掛けられている。折しも、山全体を急に暗く陰らせるように、千切れた雲が次々と通り過ぎていく。 【鑑賞】熊の生々しい生活の痕跡である熊棚と、刻一刻と表情を変える山の気象をダイナミックに結びつけています。雲がもたらす陰影が、山に潜む熊の不気味な気配をさらに引き立てています。
熊棚をかけて寂しき山路かな
山口青邨【現代語訳】木の上に熊棚が作られている。それが視界に入るだけで、この静かな山道が一段と寂しく、また心細く感じられることだ。 【鑑賞】熊そのものの姿は見えねど、新しく作られた熊棚という確かな痕跡を発見した時の、人間の緊張感と深い孤独感を詠んでいます。深まる秋の「寂しさ」が野生の息吹によって強調されています。

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