香円
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香円

こうえん

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意味・由来 香円(こうえん・香櫞とも書く)は、ミカン科の常緑小高木である「シトロン」の実を指す秋の季語です。果実はレモンに似た楕円形または丸みを帯びた形で、秋が深まるにつれて鮮やかな黄色に熟します。果肉は酸味が強く生食にはあまり向きませんが、皮に精油を多く含み、非常に気品のある爽やかで強い芳香を放つのが特徴です。そのため、古くから鑑賞用や室内の芳香剤として机の上や床の間に飾られたり、砂糖漬けや果実酒、漢方薬(生薬)として用いられてきました。 ### この季語で詠むコツ 香円を詠む際の最大のポイントは、その際立つ「香り(嗅覚)」をどのように表現するかです。鮮やかな黄色の色合いという視覚的な要素に加え、部屋や空間に漂う清涼な香りを描写することで、秋の澄んだ空気感や静寂を際立たせることができます。書斎の机上や病床の枕元など、静かな室内空間に置かれた情景と取り合わせると、香円の持つ落ち着いた風情が引き立ちます。 ### 相性のいい言葉・取り合わせ 机・卓上、書斎、病間(びょうかん)、夜寒(よさむ)、灯影(ほかげ)、掌(てのひら)、香気など、静けさや触感を伴う言葉と相性が抜群です。

香円」の俳句例 (3件)

香櫞を嗅ぎて病を忘れけり
正岡子規【現代語訳】香円の芳しい香りを嗅いでいると、重い病の苦しみさえもふと忘れてしまうことだ。【鑑賞】病床にあった子規が、枕元に置かれた香円(香櫞)の爽やかな芳香に心を慰められた瞬間を詠んでいます。果実の持つ清冽な香気が、病臥する作者の心身を癒やし、つかの間の安らぎをもたらした様子が素直に伝わってきます。
香櫞の匂ひこぼるる夜寒哉
正岡子規【現代語訳】香円の馥郁たる香りが部屋いっぱいにあふれこぼれてくる、冷え冷えとした秋の夜であることよ。【鑑賞】秋の夜の冷え込み(夜寒)と、室内に満ちる温かくも清々しい香円の香りの対比が鮮やかです。視覚的な闇や静寂の中に、香りだけが豊かに広がる情景が美しく描かれています。
香櫞の香のこもりゐたる厨かな
松本たかし【現代語訳】香円の清々しい香りが満ち満ちてこもっている台所であることよ。【鑑賞】台所という日常の生活空間に、香円特有の高雅で爽快な香りが満ちている様子を捉えた一句です。果実の皮を剥いたり加工したりした後の余韻が感じられ、生活感の中に上品な季節の訪れが香気とともに表現されています。

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