今年酒
autumn 時候

今年酒

ことしざけ

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意味・由来

「今年酒(ことしざけ)」とは、その年の秋に収穫されたばかりの新米を用いて、真っ先に醸造された酒(新酒)のことを指す仲秋・晩秋の季語です。古くから米の収穫は神の恵みとして感謝され、その初穂で造られた酒は神饌(しんせん)として神前に供えられたのち、人々にも振る舞われました。単なるアルコール飲料としての「酒」ではなく、実りの秋の喜びや自然への感謝、そして新米ならではのみずみずしく華やかな香りを含んだ、祝いと豊穣の気分に満ちた季語です。

この季語で詠むコツ

「今年酒」を詠む際は、熟成した古酒にはない「新酒ならではの若々しい香り」や「澄み切った清涼感」、そして「初物を口にする高揚感」に焦点を当てると鮮やかな句になります。また、酒そのものの味や香りだけでなく、酒樽の杉の香り、新調された杉玉、夕暮れの心地よい冷気(夜寒・そぞろ寒)など、酒をめぐる五感の情景や秋の深まりゆく風情を合わせることで、生活の温もりや風雅な味わいが深まります。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 酒器・道具:盃(さかずき)、白木、徳利、杉樽、杉玉
  • 情景・感覚:夜寒(よさむ)、秋気、宵、澄む、香り、ほろ酔ひ、蔵(くら)
  • 心情・行為:酌む、酌み交わす、祝ふ、参らす、もてなす

今年酒」の俳句例 (3件)

今年酒親にまゐらす夜寒かな
与謝蕪村【現代語訳】仕上がったばかりの新酒を、夜寒が身にしみる頃合いに親へと差し上げて酌み交わすことだ。【鑑賞】肌寒さを感じる秋の夜、出来立ての今年酒を親に献じて親孝行をする温かな家庭の情景です。新酒の芳醇な香りと、親を敬う優しい真心が「夜寒」という寒さの季語と美しく対比され、しみじみとした情感を漂わせています。
今年酒酌みてうつつの人となれ
高浜虚子【現代語訳】さあ、この出来立ての新酒を酌み交わして、現実のこのひとときを生きる人にお戻りなさい。【鑑賞】物思いに沈んでいたり、どこか上の空であったりする相手に対し、芳しい今年酒を勧めることで、現世の生きている喜びを取り戻させようと呼びかけています。新酒のみずみずしい生命力と、虚子らしい大らかで力強い人間肯定が感じられる一句です。
今年酒樽のかをりも新しき
正岡子規【現代語訳】今年の新酒は、それを詰めた酒樽の杉の香りまでもが清々しく新しいことだ。【鑑賞】搾りたての新酒のフレッシュさと、新調された酒樽から立つ爽やかな杉の香りを素直に写生しています。五感の中でも「嗅覚」に焦点を当てることで、実りの秋の清冽な空気と初物を迎えるめでたさがストレートに伝わってきます。

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