小鰭
autumn 生活

小鰭

こはだ

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意味・由来

「小鰭(こはだ)」は、ニシン科のコノシロの若魚を指し、江戸前寿司に欠かせない秋を代表する食材です。成長に伴って呼び名が変わる出世魚(シンコ、コハダ、ナカズミ、コノシロ)であり、秋になると脂がのって最も美味しくなります。俳句では、酢締めにした「小鰭鮨(こはだずし)」としてもよく詠まれます。江戸の庶民に愛された歴史があり、粋な下町情緒や季節の味覚を象徴する季語です。

この季語で詠むコツ

小鰭の魅力は何と言っても、酢で締めた際に見せる背の青みと銀色の美しい輝きです。この視覚的な美しさをどのように切り取るかがポイントになります。また、寿司屋のカウンターの凛とした空気、酢のツンとした香り、職人の見事な手並みなど、五感を刺激する背景を取り合わせると、一句の中に生き生きとした情景が立ち上がります。

相性のいい言葉・取り合わせ

・「酢(す)」「塩(しお)」「包丁(ほうちょう)」といった調理に関わる言葉 ・「のれん」「職人」「鮨桶(すしおけ)」「湯呑(ゆのみ)」などの寿司屋の風物 ・「光(ひかり)」「青(あお)」「銀(ぎん)」といった色や光を表す言葉 ・「秋風(あきかぜ)」「暮るる(くるる)」などの秋の季節感を深める言葉

小鰭」の俳句例 (3件)

小鰭鮨なみだぐましきまでに青し
日野草城【現代語訳】目の前にある小鰭の寿司は、思わず涙ぐんでしまうほどに美しく、深い青色を湛えている。 【鑑賞】酢で締められた小鰭の「青」という色彩を、ただの視覚描写にとどめず、「なみだぐましきまでに」という主観的な感情と結びつけることで、哀切でありながらも極めて美しい一瞬を表現しています。草城の繊細な美意識が結晶化した名句です。
小鰭鮨おもひのほかの安さかな
久保田万太郎【現代語訳】ふらりと立ち寄って食べた小鰭の寿司が、思ったよりも安くて、得をした気分だなぁ。 【鑑賞】東京の下町情緒や庶民の生活感を愛した久保田万太郎らしい、日常のふとした喜びを詠んだ句です。高級なイメージのある寿司の中で、庶民の味方である「小鰭」の親しみやすさと、江戸前の粋な味わいを「安さかな」と素朴に表現したユーモアのある作品です。
小鰭寿司一枚の皮にぎりけり
鈴木真砂女【現代語訳】職人が、美しく光る小鰭の一枚の皮を、鮮やかに握り上げることだ。 【鑑賞】銀座で小料理屋を営み、自らも包丁を握った鈴木真砂女ならではの観察眼が光る一句です。「一枚の皮」という言葉が、小鰭の仕込みの繊細さと、職人の高度な技術を克明に捉えています。手のひらの中で完成する一粒の芸術としての小鰭鮨が、生き生きと描き出されています。

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