蚊帳の別れ
autumn 生活

蚊帳の別れ

かやのわかれ

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意味・由来

「蚊帳の別れ(かやのわかれ)」は、秋の訪れとともに役目を終えた蚊帳(かや)を片付けること、またその季節を表す情緒豊かな秋の季語です。エアコンのない時代、夏の間は蚊から身を守るために寝室に蚊帳を吊って眠りました。しかし、朝夕が涼しくなり、蚊の声も絶え、秋風が吹き始める頃になると、蚊帳を片付ける時期が訪れます。吊り紐を外し、畳んで押し入れにしまう一連の作業は、単なる片付けではなく、「夏という季節との決別」であり、同時に寂しさを伴う「別れ」として、古くから俳人たちに愛されてきました。

この季語で詠むコツ

「蚊帳の別れ」を詠む際には、片付ける際の「音」や「視覚的な変化」、そしてそこに漂う「寂しさ」を表現するのがコツです。例えば、吊り紐を外す時の金具の音、畳んだ後の部屋の広さ、あるいは蚊帳がなくなったことで急に見通しが良くなった空間の寂寥感など、具体的な生活のディテールに注目すると良いでしょう。単に「寂しい」と言葉にするのではなく、光や影の変化、秋の風の冷たさを感じさせる言葉を組み合わせることで、情緒が深まります。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 雨、雨の音(しとしとと降る秋雨は、物寂しさを引き立てます)
  • 畳、塵(ちり)(蚊帳を片付けた後の、畳に残る痕跡やほこりに生活の実感が宿ります)
  • 風、秋風(蚊帳を外した部屋に吹き抜ける、涼しい風の質感を表現します)
  • 広さ、部屋(蚊帳を畳んだ後の、急に広くなった空間の冷ややかさを対比させます)

蚊帳の別れ」の俳句例 (3件)

蚊帳の別れやいつともなしの雨の音
久保田万太郎【現代語訳】蚊帳を片付ける時期となった。いつの間にか静かに降り出していた雨の音が、耳に優しく聞こえてくる。【鑑賞】秋の訪れとともに蚊帳を取り払う寂しさと、しとしとと静かに降る雨の音が響き合い、季節の移り変わりを繊細に捉えた情緒溢れる名句です。
蚊帳のわかれや畳のうへの塵のいろ
飯田蛇笏【現代語訳】蚊帳を片付ける時期が来た。蚊帳を吊っていた畳の上に、少しばかり積もった塵(ちり)の色が、夏の終わりを実感させる。【鑑賞】蚊帳を取り去った後に残る畳の上の塵という極めて日常的で具体的なディテールに焦点を当て、夏の生活の痕跡と秋の寂寥感を見事に描き出しています。
蚊帳の別れやおのがじしなる夢のあと
鈴木真砂女【現代語訳】蚊帳との別れ(片付ける)の時期を迎え、夏の夜に蚊帳の中でそれぞれが勝手に見ていた夢の跡を、しみじみと思う。【鑑賞】蚊帳という仕切られた狭い空間の中で、共に寝ながらも異なる夢を見ていた夏の夜を振り返り、片付けの寂しさに人生の哀愁を重ね合わせています。

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