懸煙草
autumn 植物

懸煙草

かけたばこ

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意味・由来\n「懸煙草(かけたばこ)」とは、秋に収穫した煙草の葉を乾燥させるために、軒先や畑に組んだ横木、あるいは専用の乾燥小屋などに吊るして干す様子、またその干された葉自体のことを指します。かつて日本の農村では、収穫した大ぶりの煙草の葉を一枚ずつ丁寧に縄に編み込み、秋の風と天日に当てて干す光景が広く見られました。この作業は秋の深まりを告げる代表的な風物詩であり、黄金色や褐色に変化していく葉の姿は、豊かな実りと冬への備えを感じさせます。\n\n### この季語で詠むコツ\n懸煙草を詠む際は、その「視覚的な色彩や質感の変化」と「独特の匂い」に注目するのがコツです。最初は青々としていた大きな葉が、秋の陽光を浴びて次第に黄色、そして乾いた褐色へと変わっていく時間の経過を写実的に描写します。また、風に揺れて擦れ合う乾いた音や、干された葉が放つ独特の甘酸っぱく渋みのある香りを表現することで、五感に訴えかける豊かな句になります。山里の静かな生活感や、農作業の厳しさと温かさを背景に滲ませるのも効果的です。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n- 空間・風景を表す言葉: 軒端(のきば)、山里、日向(ひなた)、土間、乾燥小屋\n- 自然の移ろいを表す言葉: 秋風、西日、斜光、ひややか、暮れ色\n- 状態や変化を表す言葉: 縮む、乾く、揺れる、編む、匂う

懸煙草」の俳句例 (3件)

懸煙草日に日にちぢむ乾きかな
飯田蛇笏【現代語訳】吊るしてある煙草の葉が、秋の日に干されて毎日少しずつ縮みながら乾いていくことよ。\n【鑑賞】煙草の葉が乾燥していく微細な変化を「日に日にちぢむ」と極めて写実的に捉えています。秋の乾いた空気感と、静かに流れる時間の経過を対比させた見事な観察眼が光る一句です。
懸煙草ゆれて日影のうごきけり
阿波野青畝【現代語訳】干された煙草の葉が秋風にゆらゆらと揺れて、それに伴って地面に落ちる日陰の影も静かに動いている。\n【鑑賞】風と光の動きを、懸煙草の揺れと地面の影の連動を通して繊細に描き出しています。秋の農村の穏やかで静かな時間の流れを感じさせる、絵画的な美しさを持つ名作です。
懸煙草夕日のあたる一葉かな
飯田蛇笏【現代語訳】たくさん吊るされた煙草の葉の中に、ちょうど沈みゆく夕日の光が当たって、美しく輝いている一枚の葉があることだ。\n【鑑賞】夕暮れ時の斜光が、乾燥しつつある煙草の葉の一枚を黄金色に浮かび上がらせる瞬間を美しく切り取っています。無数の葉の中から「一葉」に焦点を当てることで、秋の哀愁と自然の美しさが際立ちます。

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