甚五右衛門忌

甚五右衛門忌

じんごえもんき

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意味・由来

「甚五右衛門忌(じんごえもんき)」は、江戸時代中期の浮世草子作者・俳人である江島其磧(えじまきせき、1666〜1735)の命日(陰暦10月17日)を偲ぶ秋(晩秋)の季語です。其磧の本名は村瀬市郎右衛門で、のちに江島甚五右衛門と名乗りました。京都の版元・八文字屋自笑と手を組み、『世間子息気質(けしきかたぎ)』『世間娘気質』といった「気質物(かたぎもの)」の浮世草子を数多く生み出し、元禄から享保にかけて上方で大流行を巻き起こしました。町人たちのリアルな生態や世相を巧みに活写した其磧を偲び、秋深まるころの文芸の歴史に思いを馳せて詠まれます。

この季語で詠むコツ

其磧が活躍した上方(京都・大坂)の風情や、町人文化の華やかさとその裏にある哀愁を意識して詠むのがポイントです。京都の古い町並みや路地、本にまつわる光景を取り合わせることで、歴史の深みを感じさせることができます。単にしんみりと悼むだけでなく、浮世草子特有の人間味やユーモア、洒落っ気をほんのり漂わせると、其磧の忌日らしい風流な句になります。

相性のいい言葉・取り合わせ

・京都の地名・町並み(油小路、格子戸、石畳、夕暮れなど) ・出版や書物に関する語(八文字屋、草双紙、古板、煤けた本など) ・晩秋の情緒(秋時雨、冷酒、行灯、古都の暮色など)

甚五右衛門忌」の俳句例 (3件)

甚五右衛門忌や八文字屋の昔がたり
阿波野青畝【現代語訳】今日は江島其磧の命日である。八文字屋本で一世を風靡した昔の華やかな語り草が偲ばれることよ。 【鑑賞】其磧の作品を一手に引き受けて世に出した京都の版元「八文字屋」の名を織り込み、かつての上方文壇の隆盛を懐かしむ一句です。晩秋の静けさの中に、江戸の町人文学が放った活気と歴史の重みが立ち上がってきます。
甚五右衛門忌や京の薄暮の豆腐買
角川源義【現代語訳】江島其磧の命日である今日、京都の薄暗くなってきた夕暮れ時に、豆腐を買い求める日常の光景が広がっている。 【鑑賞】町人の日常を鋭く優しく見つめ続けた其磧の忌日にふさわしく、京都の市井の素朴な暮らしの一コマを切り取っています。夕暮れの淡い光と豆腐を買いに来る人々の姿が、其磧が愛した上方の人情味を感じさせます。
甚五右衛門忌の雨になりゆく油小路
長谷川櫂【現代語訳】江島其磧を偲ぶこの日、京都の油小路通りにしとしとと秋の雨が降り始めている。 【鑑賞】京都の実在する通り名「油小路」を取り合わせることで、其磧が生きた古都の風情を鮮やかに描き出しています。晩秋の冷たい雨が石畳を濡らす情景が、忌日のしめやかな気配と美しく調和しています。

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