鰯の黒漬

鰯の黒漬

いわしのくろづけ

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意味・由来

「鰯の黒漬(いわしのくろづけ)」とは、秋に獲れた新鮮な鰯(イワシ)を糠や塩、麹、あるいは魚醤油(いしる等)などに漬け込んで発酵・熟成させた伝統的な保存食のことです。特に北陸地方(能登や富山など)の郷土料理として知られ、漬け込む過程で鰯が黒ずんだ深い飴色や黒褐色になることからその名がつきました。秋の味覚である脂ののった鰯を冬や翌春まで保存するための生活の知恵であり、塩辛さと独特の濃厚な旨味・風味が特徴です。秋の暮らしの深まりと潮の香りを象徴する生活季語です。

この季語で詠むコツ

「黒漬」という言葉が持つ、少し重みのある色彩感と発酵食ならではの鄙びた(ひなびた)味わいを活かすのがポイントです。壺や樽の底に沈む暗がり、晩秋の静けさ、素朴な食卓のぬくもり、あるいは酒の肴としての情景を描くと効果的です。単なる珍味としてではなく、過酷な冬を迎える海辺の暮らしや旅愁、秋の夜長のしみじみとした時間の流れと響き合わせるように詠んでみましょう。

相性のいい言葉・取り合わせ

  • 暮らし・器: 壺、樽、重石、小鉢、素焼き、白飯、晩酌、囲炉裏
  • 光景・風情: 潮風、能登、浜、灯影、夜長、秋深し、月の前、暮色

鰯の黒漬」の俳句例 (3件)

黒漬の鰯ならべつ月の前
鈴木花来【現代語訳】美しく照る秋の月明かりの下に、黒漬の鰯を取り出して並べた。 【鑑賞】澄んだ秋の月光と、黒ずんだ鰯の黒漬との明暗の対比が鮮やかな一句です。質素でありながら味わい深い秋の夜の晩酌や夕餉の情景が浮かび上がります。
鰯黒漬壺のくらがり秋深し
加藤知世子【現代語訳】鰯の黒漬が納められている保存用の壺の底の暗がりを覗き込むと、いよいよ秋が深まってきた実感が湧く。 【鑑賞】保存食を仕込んだ壺の奥深くにある暗闇と、次第に夜が長くなり寒さが増していく晩秋の陰翳とを重ね合わせた、重厚で深みのある名句です。
鰯黒漬能登の旅籠の灯を恋ふる
長谷川櫂【現代語訳】鰯の黒漬を口にすると、以前訪れた能登の旅籠のあたたかな灯りが懐かしく思い出される。 【鑑賞】黒漬の濃厚な郷土の風味を通して、旅情やかつて過ごした能登の夜の温もりを回想しています。土地の味覚が記憶を鮮やかによみがえらせる瞬間を捉えています。

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