稲馬

稲馬

いなうま

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意味・由来

「稲馬(いなうま)」とは、秋の収穫期に、刈り取った稲束を背中に高く積み上げて運ぶ馬のことです。かつての農村では、田んぼから屋敷や脱穀場へ稲を運ぶ重労働の主力を馬が担っていました。黄金色に実った稲を山のように背負い、誇らしげに、あるいはのっしりと歩く馬の姿は、豊穣の喜びと農作業の活気を象徴する秋の代表的な風物詩です。機械化が進んだ現代では見かける機会が減りましたが、日本の原風景の温もりと郷愁を色濃く宿す季語です。

この季語で詠むコツ

稲馬を詠む際は、視覚的な情景だけでなく「重量感」や「音」「光」などの五感を生かすのがコツです。背負った稲の重みに耐えて歩く馬の健気さ、首に付けられた鈴の澄んだ響き、秋の夕日を浴びて金色に輝く稲束と馬の影など、具体的な描写を重ねることで、どこか懐かしく温かみのある秋の情景が鮮やかに立ち上がります。

相性のいい言葉・取り合わせ

・「夕日」「落日」「夕暮れ」(稲馬のシルエットや秋の哀愁を際立たせる光の描写) ・「畦(あぜ)」「野道」「坂道」(農村特有の細い道や起伏を表す言葉) ・「鈴の音」「蹄(ひづめ)」「鼻息」(馬の気配や聴覚・触覚を刺激する言葉)

稲馬」の俳句例 (3件)

稲馬や夕日のあたる馬の尻
正岡子規【現代語訳】刈り取った稲を背負った馬が歩いている。その馬の大きなお尻に、秋の夕日が赤々と照り映えている。 【鑑賞】稲を山積みにした馬の背後から夕日が差し込み、お尻に光が当たっている様子を写生的に捉えたユーモラスで温かい一句です。収穫の一日の終わりと、馬への親しみが素朴に描かれています。
稲馬の行くへ暮れゆく穂田かな
前田普羅【現代語訳】稲を背負った馬が向かう先を見渡せば、刈り残された稲田の広がるあたり一面が、しだいに夕暮れの色に染まっていく。 【鑑賞】「穂田(ほだ)」の広がりと、そこを歩む稲馬の進む先が暮れていく情景を雄大に捉えています。実りの秋の豊かな自然と、夕暮れの時間の推移が情感豊かに響き合っています。
稲馬の去つて落日のあぜ路かな
内藤鳴雪【現代語訳】稲を運ぶ馬が通り過ぎて行ったあと、細い畦道にはただ秋の夕日だけが静かに落ちていく。 【鑑賞】稲馬が去った後のふっと訪れる静けさと寂寥感を詠み上げています。夕暮れの畦道に残る余韻が、秋の日の暮れやすさと収穫の充足感を同時に伝えてくれます。

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