肥前鴉

肥前鴉

ひぜんがらす

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意味・由来

「肥前鴉(ひぜんがらす)」とは、カラス科のカササギ(鵲)の地方名・異称で、秋の季語として親しまれています。文禄・慶長の役(朝鮮出兵)の際、肥前国(現在の佐賀県・長崎県)の領主であった鍋島直茂らが朝鮮半島から持ち帰り、佐賀平野を中心に繁殖・定着したと伝えられています。そのため「佐賀鴉」「朝鮮鴉」「カチガラス」とも呼ばれます。羽の一部が白く腹部も白いため、全身が黒い一般的なカラスとは異なり、コントラストの美しいツートンカラーが特徴です。豊穣の秋を迎えた肥前平野の空や田園風景とともに愛されてきました。

この季語で詠むコツ

肥前鴉を詠む際は、一般的なカラスの不吉さや野暮ったさとは一線を画す「白と黒の鮮やかな羽色」や、「カチカチ」という独特の甲高い鳴き声、そして佐賀平野(有明海沿岸)特有の風土を意識することがポイントです。稲刈りの終わった広大な刈田、青く澄み渡る秋晴れの空、あるいは実りの秋の豊かな田園風景など、背景となる色彩や広がりを対比させると、この鳥ならではの存在感が際立ちます。

相性のいい言葉・取り合わせ

・地理・風土に関する言葉:佐賀野、筑紫、有明、クリーク、干拓地 ・秋の景物:刈田(かりた)、落穂、芒(すすき)、秋日和、秋晴、新米 ・動態・色彩:白黒、カチカチと鳴く、低く翔ぶ、群れ遊ぶ

肥前鴉」の俳句例 (3件)

肥前烏鳴いて筑紫の秋深し
松根東洋城【現代語訳】肥前鴉(カササギ)が甲高く鳴き交わし、ここ筑紫の平野にも秋の深まりがしみじみと感じられる。 【鑑賞】カササギの特異な鳴き声が、九州・筑紫平野の乾いた秋空に響き渡る情景を捉えた句です。肥前鴉という地域性のある季語を用いることで、土地の歴史や風土の広大さを静かに滲み出させています。
肥前烏翔ちて筑紫の刈田晴
水原秋櫻子【現代語訳】肥前鴉がふわりと飛び立ち、見渡すかぎりの筑紫平野の刈田には清々しい秋晴れの光が満ちている。 【鑑賞】稲刈りを終えた明るい田野と、そこから飛び立つ肥前鴉の鮮やかな白黒の羽が、秋晴れの光の中に美しく描かれています。色彩感覚に優れた秋櫻子らしい、爽快で絵画的な名作です。
肥前烏羽をひろげて田に下りぬ
高野素十【現代語訳】肥前鴉が美しい羽をいっぱいに広げて、刈り入れの済んだ田んぼへと舞い下りていった。 【鑑賞】純客観写生の眼でカササギの着地の一瞬を捉えています。広げられた羽の白と黒の対比が鮮明に浮かび上がり、静かな秋の田園における鳥の一挙手一投足が的確に写し取られています。

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