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「菱取る(ひしとる)」は、秋に池や沼、濠(ほり)などの水面に繁茂した水草「ヒシ」の実を収穫する様子を詠む季語です。ヒシの実は硬い角を持ち、茹でて食べると栗に似た素朴な甘みがあるため、古くから貴重な秋の味覚や薬用として親しまれてきました。収穫は、水面に小舟や大きなたらい(半切り桶)を浮かべ、水中に手を差し入れて手作業で実を摘み取ります。水辺の長閑な秋の風情と、水仕事ならではの静かな労働風景を併せ持つ生活美豊かな季語です。
「菱取る」を詠む際は、水辺の冷たさや光、舟の揺れといった五感に触れる描写を取り入れるのがコツです。水面に手を浸したときの冷感や、水滴を滴らせながら実を掲げる動作、あるいは水面を渡る秋風の心地よさなどに着目してみましょう。遠景として沼に浮かぶ舟ののんびりとした姿を切り取るか、近景として作業する人の手元や息づかいを描くかによって、句の風情が大きく変化します。
・舟・道具:小舟(をぶね)、たらい桶、櫂(かい)、竹竿、籠 ・水辺の情景:沼、池、濠、水輪、さざ波、岸辺、夕暮 ・感覚・動作:手の雫、袖濡らす、水冷たし、傾く、呼び交わす
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