菱喰

菱喰

ひしくい

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意味・由来

「菱喰(ひしくい)」は、カモ目カモ科の大型の水鳥で、雁(がん)の仲間です。秋になると越冬のためにシベリア方面から日本の湖沼や湿地へと渡ってきます。名前に「菱」とある通り、水草であるヒシの実を主食の一つとして好んで食べることが由来となっています。一般的なマガンよりも一回り大きく、黒いくちばしの先端付近に鮮やかな橙色の帯があるのが特徴です。秋の深まりとともに北国から力強く飛来する姿は、本格的な寒さの訪れを告げる風物詩として古くから親しまれています。

この季語で詠むコツ

菱喰を詠む際は、その「大型の鳥ならではの重量感や羽音の迫力」と「湖沼や夕暮れの情景がもたらす静寂」の対比を意識すると効果的です。単に鳥の姿を描くだけでなく、群れで水面に舞い降りる瞬間のダイナミックな動き、あるいは水草をついばむ静かな仕草や水面の波紋に焦点を当てると、臨場感あふれる句になります。晩秋特有の澄み切った冷たい大気感や、夕暮れの薄暗がりなどを背景に据えると、季節感が一層引き立ちます。

相性のいい言葉・取り合わせ

・水辺の景観:「潟(かた)」「湖(うみ・みずうみ)」「沼」「芦(あし)」「波紋」 ・空や光の情景:「夕茜(ゆうあかね)」「暮色」「薄日」「北風」「冷気」 ・動作や質感:「羽音(はおと)」「水煙」「嘴(くちばし)」「重たき」

菱喰」の俳句例 (3件)

菱喰の水掻きしづかに畳まるる
河野多希女【現代語訳】水面を泳ぎきった菱喰の大きな水掻きが、水中で静かに折り畳まれている。 【鑑賞】大柄な水鳥である菱喰の、水面下に隠された繊細な動きに鋭い観察眼を向けた作品です。「畳まるる」という丁寧で静かな描写によって、晩秋の張り詰めた冷たい水気と、野鳥の持つ優美な気品が見事に表現されています。
菱喰の暮れゆく水に嘴洗ふ
大野林火【現代語訳】夕暮れの色が濃くなっていく水辺で、菱喰が静かにくちばしを水につけて洗っている。 【鑑賞】一日の終わりに湖面でくつろぐ菱喰の姿を捉えた情景句です。ヒシの実などを食べた後の自然な仕草である「嘴洗ふ」動作と、次第に暗さを増していく水景が美しく調和し、秋の夕暮れの哀愁と静けさをしみじみと感じさせます。
菱喰の落つるばかりに渡りけり
正岡子規【現代語訳】菱喰の群れが、まるで空から真っ逆さまに落ちてくるかのような激しい勢いで、水面へと渡ってきたことだ。 【鑑賞】北国から飛来した菱喰の力強さと重量感を大胆に捉えた一句です。「落つるばかりに」という誇張を含んだ表現が、大きな翼を羽ばたかせながら一気に湖へと降り立つ大迫力の光景を生き生きと描き出しています。

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