鯷干す

鯷干す

ひしこほす

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意味・由来

「鯷干す(ひしこほす)」は、秋に獲れるカタクチイワシ(背黒鰯)の稚魚や小魚である「鯷(ひしこ)」を、浜辺や網の上に広げて天日干しにする初秋から仲秋にかけての光景を詠む季語です。干された鯷は煮干しや田作り、肥料などに加工されます。秋の澄み渡る青空と乾いた潮風、そして砂浜一面に敷き詰められた小魚がキラキラと銀色に輝く様子は、漁村の活気と豊かな実りの季節を象徴する風物詩です。

この季語で詠むコツ

鯷干す風景は、単に「魚を干している」という作業だけでなく、五感を刺激する要素に満ちています。太陽光に照らされて光る銀色の魚体という「視覚」、浜風に乗って漂う濃厚な魚や潮の「嗅覚」、砂の温もりや魚の乾燥具合といった「触覚」などを捉えると、生き生きとした句になります。また、干場を取り囲む松原、押し寄せる白波、寄ってくる海猫(うみねこ)など、海辺ならではの景物と取り合わせることで、秋晴れの開放的な広がりを描き出すことができます。

相性のいい言葉・取り合わせ

・視覚を誘う言葉:秋日和、銀鱗、白砂、筵(むしろ)、青空 ・嗅覚・風を感じる言葉:潮風、浜風、磯の香、日差の匂ひ ・海辺の生活や自然:松原、白波、舟、海猫、昼寝

鯷干す」の俳句例 (3件)

鯷干すや松の木蔭に昼寝人
正岡子規【現代語訳】鯷を干している浜辺の、松の木陰で気持ちよさそうに昼寝をしている人がいる。【鑑賞】浜辺一面に強い日差しが照りつけて鯷が干されている動的な作業の場と、木陰でぐっすり眠る人物の静けさとの対比が秀逸です。のどかで大らかな秋の漁村のひとときを素直にスケッチしています。
鯷干すや浜の小砂利のあたたまり
山口青邨【現代語訳】鯷が干されている浜辺の小砂利が、秋の太陽の光を浴びて心地よく温まっている。【鑑賞】鯷そのものの描写から少し視点をずらし、敷かれた小砂利のぬくもりに着目した句です。秋の穏やかな日差しと、砂浜が蓄える柔らかな熱を通じて、鯷がじっくりと乾燥していく豊かな時間を体感させてくれます。
鯷干すや砂のまろびの指の間に
阿波野青畝【現代語訳】鯷を干す作業をしていると、丸みを帯びた浜の砂が指のすき間をこぼれ落ちていく。【鑑賞】鯷を干す手元の細やかな触覚を捉えた写実的な名句です。魚を広げる手の動きに伴ってさらさらとこぼれる乾いた砂の感触から、秋晴れの清々しさと乾いた空気感が鮮やかに立ち上がってきます。

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