茅蜩

茅蜩

ひぐらし

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意味・由来\n茅蜩(ひぐらし)は、セミ科の昆虫で、「カナカナカナ……」と澄んだ甲高い声で鳴くのが特徴です。夏の終わりから初秋にかけて、薄暗い早朝や夕暮れ時、あるいは雨が降りそうな曇天の山林などで盛んに鳴きます。その哀愁を帯びた鳴き声が日の暮れを告げるように聞こえることから「日暮」の名がついたとされています。俳句では晩夏のイメージも強いものの、秋の涼気や寂寥感を際立たせる代表的な「初秋」の季語として古くから親しまれてきました。\n\n### この季語で詠むコツ\n茅蜩を詠む最大のポイントは、その鳴き声がもたらす「静寂の深まり」や「時間の陰り」を捉えることです。単に声の美しさを述べるだけでなく、鳴き声が響くことでかえって際立つ山あいの静けさ、夕暮れの薄暗がり、夕立のあとのひんやりとした空気感などを表現すると効果的です。一日が終わろうとする切なさや、過ぎ去る季節への追憶など、心情的な陰影と結びつけることで句に深い余情が生まれます。\n\n### 相性のいい言葉・取り合わせ\n山影、杉木立、渓流、水音、夕立、薄暮、古寺、板戸、畳など、静寂や仄暗さ、冷涼感を感じさせる言葉と抜群の相性を見せます。「暮れゆく時間」「山や森の湿り気」「旅先の宿」といった情景を取り合わせることで、茅蜩特有の物悲しくも清澄な世界観を鮮やかに描き出すことができます。

茅蜩」の俳句例 (3件)

ひぐらしや十むら立ちの雨雲に
松尾芭蕉【現代語訳】空を見上げるといくつもの群れをなして雨雲が立ち込めている。その下で、ひぐらしの澄んだ声が響きわたっている。\n【鑑賞】夕立をもたらしそうな重々しい雨雲の広がりと、そこに響くひぐらしの鋭く哀切な鳴き声との対比が見事な句です。雲の暗がりと声の透明感が、刻一刻と暮れゆく空模様の緊張感と美しさを伝えています。
茅蜩やきのふも過し宿の庭
高浜虚子【現代語訳】今日もひぐらしが鳴いている。昨日も同じように一日を過ごしたこの旅宿の庭で。\n【鑑賞】旅先での滞在が何日か続き、昨日と同じように夕暮れを迎えてひぐらしの声を聞いている情景です。旅の静かな倦怠感と、規則正しく巡る自然の営みが溶け合い、しみじみとした時間の流れを感じさせます。
蜩や山をめぐれる水の音
水原秋桜子【現代語訳】ひぐらしが鳴き響いている。その声の向こうから、山を巡り流れる谷川の水音が涼やかに聞こえてくる。\n【鑑賞】山あいに響くひぐらしの金属的な声と、絶え間なく流れる水の音という二つの清冽な聴覚情報を重ね合わせた一句です。深山の涼しさと透明な大気が立体的に立ち上がり、秋の気配の訪れを心地よく感じさせます。

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