鳩吹く風

鳩吹く風

はとふくかぜ

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意味・由来

「鳩吹く風(はとふくかぜ)」とは、秋の山野で「鳩吹(はとふき)」を行う頃に吹く、どこか物寂しく澄んだ風のことです。そもそも「鳩吹」とは、両手の親指を合わせて隙間に息を吹き込み、山鳩の鳴き声(ポッポーという求愛音)を真似て誘い寄せる猟法や、それに興じる遊びを指す秋の季語です。木々が色づき始め、空気が澄み渡る秋の山中に、筒状にした手から漏れ出る哀愁を帯びた呼子の音。その切ない音色を遠くまで運んでいく冷涼な風そのものを捉えたのが「鳩吹く風」という情緒豊かな季語です。

この季語で詠むコツ

鳩の鳴き真似をする人の姿だけでなく、「風」そのものに焦点を当て、秋の山間の静寂や空気の透明感を描き出すのがポイントです。風の冷たさ、木立を揺らす音、木漏れ日の揺らぎなどを取り入れると、聴覚と触覚が重なり合う立体的な句になります。人里離れた山深さや、ふと立ち止まった旅人の孤独感など、少し寂寥感(せきりょうかん)を滲ませると秋らしさが際立ちます。

相性のいい言葉・取り合わせ

山や森の情景を想起させる言葉と非常によく合います。

  • 自然・地形:木立、杉木立、峠、峡(かい)、谷戸、木漏れ日、落葉
  • 情感・感覚:澄む、しじま、こだま、遠音(とおね)、冷ややか、うす日
  • 動詞:渡る、届く、そよぐ、誘う、消え入る

鳩吹く風」の俳句例 (3件)

鳩吹や風のまにまに日の光
黒柳召波【現代語訳】手を組んで鳩の鳴き声を真似て吹いていると、吹き渡る秋風の動きにつれて、木漏れ日の光が揺れ動いている。【鑑賞】与謝蕪村の高弟である召波の代表句です。鳩を呼ぶ音色が森に響くなか、風がサッと吹き抜け、梢が揺れて木漏れ日がちらちらと地にこぼれる情景を捉えています。「風」と「光」の捉え方が絵画的で、鳩を吹く静けさと風の動的な美しさが見事に調和しています。
鳩吹くや木立の奥の空の青
高浜虚子【現代語訳】鳩を呼ぶ笛の音が響き渡る。見上げれば、木立の梢のその奥に、秋の澄み切った青空が広がっている。【鑑賞】山中で鳩を吹く音と、木々の隙間から覗く秋晴れの空の青さとの対比が鮮烈な一句です。風が木立を揺らして葉の隙間を広げ、青空が目に飛び込んでくるような清涼感があります。聴覚的な季語「鳩吹く」から視覚的な大空の広がりへと視線が抜けていく構成が秀逸です。
鳩吹いて日かげのうすき山路かな
前田普羅【現代語訳】鳩を吹いて呼び寄せながら歩いていると、秋の日差しがかすかに弱まり、風も肌寒くなってきた山道であることよ。【鑑賞】普羅が得意とした山岳俳句の佳作です。秋の山道は日の傾きとともに急激に日影が薄くなり、冷たい山風が立ち始めます。自分の手の中で吹く鳩の音の素朴な温かみと、周囲を取り巻く薄暗く冷涼な秋風の対比が、旅情と孤独感を深く醸し出しています。

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