冬を隣る

冬を隣る

ふゆをとなる

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意味・由来

「冬を隣る(ふゆをとなる)」は晩秋の季語で、名詞形の「冬隣(ふゆどなり)」としても非常によく使われます。暦の上でも肌感覚でも秋が深まり、まるで隣の部屋に冬が引っ越してきたかのように、すぐそこまで冬の冷気や気配が迫っている情景を表します。寒々とした晩秋の寂寥感だけでなく、これから訪れる本格的な寒さに備える人々の暮らしの温もりや、自然の微細な変化を親しみと実感をもって捉える日本情緒あふれる美しい季語です。

この季語で詠むコツ

単に「寒くなってきた」という温度変化を詠むのではなく、「冬がすぐ隣に佇んでいる気配」を五感で捉えて表現するのがポイントです。例えば、日差しの傾きの早さ、朝夕の冷気、肌に触れる湯の温かさ、湯気、厚手の衣服を取り出す動作など、日常のささやかな変化を取り合わせると実感が湧きます。擬人化のような親密さを含む季語なので、静けさや切なさの中にもどこか暮らしのぬくもりを漂わせると詩情が深まります。

相性のいい言葉・取り合わせ

・生活の温もりを感じさせるもの(湯気、煮炊き、灯火、お茶、羽織、靴下) ・日差しの変化や視覚的なもの(影法師、夕日、大根の葉、庭石) ・五感に訴える動詞(煮る、梳く、冷める、羽織る、暮るる)

冬を隣る」の俳句例 (3件)

大根の葉のひろごりて冬隣
室生犀星【現代語訳】畑の大根が青々と葉を大きく広げており、もうすぐそこに冬が近づいているのを感じる。 【鑑賞】瑞々しく力強い大根の葉の成長を通して、季節の移ろいと冬の到来を鮮明に捉えた名句です。大根という冬の代表的な野菜の生命力を描写することで、寒さへ向かう寂しさを超え、暮らしの健やかさや大地の恵みが素朴に伝わってきます。
髪梳いて胸にとどくや冬隣
桂信子【現代語訳】髪に櫛を入れて梳いていくと、するりと胸元に届く。そのふとした瞬間に、冬がすぐ隣まで来ていることを感じる。 【鑑賞】日常の身づくろいの中で感じる肌の冷えや、髪が胸に触れる感触など、女性らしい繊細な身体感覚から冬の気配を捉えています。「胸にとどく」というわずかな動きと「冬隣」の寂寥感が溶け合い、静謐で艶やかな詩情を醸し出しています。
湯ざめして素肌いとしき冬隣
日野草城【現代語訳】風呂から上がって肌が冷えてゆき、自分の素肌がいとおしく思える。すぐ隣にはもう冬が来ているのだ。 【鑑賞】入浴後の湯冷めという誰もが経験する肌寒さから、迫り来る冬の足音を感受した一句です。冷えてゆく自分の身体をいとおしむ内省的な情緒と、冷涼な晩秋の空気が見事に調和しており、生活感と耽美性が絶妙に同居しています。

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