秋忘

秋忘

あきわすれ

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意味・由来

「秋忘(あきわすれ)」とは、秋の深まりとともに訪れる物寂しさやアンニュイな気分の中で、ふと物忘れをしたり、ぼんやりと我を忘れたりする心持ちを表す季語です。春の「春眠」や「春愁」にも似た心の揺らぎですが、秋忘には澄んだ空気や日暮れの早さ、枯れゆく自然がもたらす特有の静けさと哀愁が宿っています。老いや時間の経過に対する静かな諦念や、日常のふとした空白感を詩情豊かに捉える言葉です。

この季語で詠むコツ

「何でもない日常の動作」と組み合わせることで、秋忘の持つ心のエアポケットが際立ちます。探し物をしている場面、返事を書きあぐねている時間、窓の外をぼんやり眺めている瞬間など、具体的でささやかな行動・佇まいを描写するのがポイントです。大げさに嘆くのではなく、静けさの中に漂う寂寥感を淡々とスケッチするように詠むと深みが生まれます。

相性のいい言葉・取り合わせ

・身の回りの動作:手紙、眼鏡、鍵、手袋、鉛筆を削る、立ち止まる ・時間や光の描写:夕暮れ、秋日、障子、鏡、影 ・静寂を感じさせる言葉:かすかな音、風の音、時計の針、白さ

秋忘」の俳句例 (3件)

秋忘れもの言ふときの眼の濁り
森澄雄【現代語訳】秋の寂寥のなか我を忘れているのだろうか、言葉を交わすその人の瞳にふと濁りが差している。 【鑑賞】他者とのふとした会話の瞬間、相手の瞳に宿る陰影から季節の深まりと老い、あるいは生のはかなさを鋭く捉えた一句です。
秋忘鉛筆削る音ばかり
大石悦子【現代語訳】秋の物忘れがちな静けさのなか、ただ鉛筆を削るカリカリという音だけが部屋に響いている。 【鑑賞】作業の手を止めてぼんやりとしている時間の長さを、「鉛筆を削る音」という聴覚の描写だけで見事に表現しています。澄んだ秋の空気と孤独感が伝わります。
秋忘鏡のなかの古りゆく顔
能村登四郎【現代語訳】ふと我に返って鏡を覗き込むと、そこには秋の深まりとともに年老いてゆく自分の顔があった。 【鑑賞】ふとした瞬間に鏡の中の自分自身と対峙し、知らぬ間に重ねていた歳月と秋の訪れを結びつけた、静かで深い自己凝視の句です。

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