秋しくの花

秋しくの花

あきしくのはな

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意味・由来

「秋しくの花(あきしくのはな)」とは、シュウカイドウ科の多年草である「秋海棠(しゅうかいどう)」の雅称・別称です。初秋のころ、日陰や湿り気のある庭の片隅などに、淡い紅色の可憐な花がややうつむき加減に咲きます。秋が深まるにつれて花びらが地面にしっとりと散り敷く情景や、秋の気配を敷き詰めるように静かに咲き広がる様子からこの名で呼ばれるようになりました。中国原産で、日本には江戸時代初期に渡来し、その風情ある佇まいから文人や俳人たちに深く愛されてきました。

この季語で詠むコツ

「秋しくの花」は、華やかさよりも、どこか物寂しく清楚でしっとりとした情緒を詠むのに適しています。半日陰の苔むした庭壇、雨上がりの露をたたえた姿、土や石の上に淡い紅の花びらが散り落ちている様など、視覚的な静けさや陰影に着目すると句に深みが生まれます。また、音の響きが優雅で柔らかいため、五七五の調べを流麗に整えたいときにも効果的です。

相性のいい言葉・取り合わせ

・天候・自然現象:秋雨、霧、露、夕暮れ、日陰、木漏れ日 ・場所・情景:苔、庭石、竹垣、古寺、水辺、軒端 ・色・状態:うす紅、淡し、うつむく、零る(こぼる)、濡る(ぬる)

秋しくの花」の俳句例 (3件)

秋海棠西瓜の色に咲きにけり
松尾芭蕉【現代語訳】秋海棠の花が、まるでよく熟れた西瓜の果肉のような、みずみずしく淡い紅色に咲いていることよ。 【鑑賞】芭蕉が秋海棠(秋しくの花)独特の透明感のある淡紅色を、身近な果物である西瓜の果肉の色に見立てて捉えた清新な一句です。植物の色彩の美しさを的確かつ親しみやすく表現しています。
秋海棠雨のかなしき日なりけり
高浜虚子【現代語訳】秋海棠の花に秋雨が静かに降り注ぎ、なんとも物悲しく切ない一日であることだなあ。 【鑑賞】雨に打たれてうつむく秋海棠の風情と、秋の雨がもたらす寂寥感を重ね合わせた名句です。余計な修辞を削ぎ落とした素直な詠みぶりが、花のはかなさと情緒を際立たせています。
秋海棠すくすくとして雨を帯ぶ
正岡子規【現代語訳】秋海棠の茎がまっすぐすくすくと伸び、その淡い花びらがしっとりと雨に濡れている。 【鑑賞】病床にあった子規が、庭先の秋海棠の生命力とみずみずしさを写生した句です。単にしな垂れる弱々しさだけでなく、「すくすく」というオノマトペによって植物の健やかな立ち姿と雨の風情を鮮やかに描いています。

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