秋のセル

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意味・由来

「秋のセル」とは、羊毛の綾織物(サージ/セル)で仕立てた単衣(ひとえ)の着物や衣服を着る、初秋の生活季語です。セルは軽くて丈夫、程よい保温性があるため、夏の薄物から冬の綿入れや袷(あわせ)に移る端境期である初秋から仲秋にかけて重宝されました。朝夕の肌寒さをふと感じる時期に袖を通すため、季節の移ろいや人肌恋しさ、どこか哀愁を帯びた情緒を醸し出します。

この季語で詠むコツ

布地のさらりとしつつも微かに温かい「手触り」や「重み」、袖を通した瞬間の「肌感覚」を意識して詠むのがポイントです。また、夏の賑やかさが去ったあとの少し寂しい心境や、誰かを思う情感、日常のふとした動作(外出の支度、箪笥から取り出す様子など)と結びつけると、季語の持つ繊細な風情がぐっと引き立ちます。

相性のいい言葉・取り合わせ

・触覚・動作:袖を通す、羽織る、手ざわり、ほぐれる、たたむ ・情景・時間:夕暮れ、黄昏、灯影、街の風、露、夜寒 ・心情・境遇:人恋し、病みあがり、独り、久しき友、古着

秋のセル」の俳句例 (3件)

秋のセル着てゆく先もなかりけり
久保田万太郎【現代語訳】秋のセルを着てみたものの、特に出かけていく当てもないことだなあ。 【鑑賞】季節の変わり目に秋用のセルの着物を身につけたものの、行くあてのない作者の所在なさと孤独感を淡々と詠んでいます。都会的な倦怠感と、秋の訪れによる寂寥感が「秋のセル」の質感と見事に調和しています。
街へ出るこゝろほぐれず秋のセル
星野立子【現代語訳】秋のセルを着て街へ出かけるのだが、どこか気持ちが晴れ晴れとほぐれないままだ。 【鑑賞】外出の装いを整えたものの、心の奥にある憂鬱や硬さが解けない心理を描いています。セルの少し硬めの生地感と、秋風の冷たさが作者の内省的な気分の重さと重なり合い、女性らしい繊細な陰影を生んでいます。
秋のセル母の古着の匂ひせり
角川源義【現代語訳】秋のセルを着ると、亡き母の古着特有の懐かしい匂いがしてきた。 【鑑賞】母の遺品であるセルの着物に袖を通した際、布地に染み付いた母の匂いを感じて生前を偲んでいる句です。「秋のセル」が持つ温もりと哀愁が、母への尽きない思慕と哀悼の情をより一層深く印象づけています。

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