秋の虫送り

秋の虫送り

あきのむしおくり

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意味・由来

「秋の虫送り」とは、初秋から仲秋にかけて、稲につく害虫を松明(たいまつ)の火や鐘・太鼓の音で追い払い、村境の外へ送り出す伝統的な農村行事のことです。一般に「虫送り」は初夏の季語として知られますが、秋の収穫を目前にした時期に稲穂を守るために行われる地域もあり、これを「秋の虫送り」や「実虫送り」と呼んで区別します。暗闇の中に揺れる松明の列は幻想的であり、五穀豊穣への切実な祈りと、去りゆく季節への哀愁が入り混じった独特の情緒を持っています。

この季語で詠むコツ

夜の闇に浮かぶ「松明の赤」と「稲穂の緑・黄金色」という強い色彩の対比を描くと情景が鮮やかに立ち上がります。また、鉦や太鼓、子供たちの掛け声といった「音」の要素を取り入れたり、火の粉が散る瞬間や煙の匂いといった五感を刺激する描写を入れると臨場感が出ます。行事の持つ厳かさや祈りの切実さに焦点を当てるのも効果的です。

相性のいい言葉・取り合わせ

・視覚:松明、火の粉、闇、あぜ道、煙、稲穂 ・聴覚:鉦(かね)、太鼓、囃子、遠音(とおね) ・心情・情景:祈り、村境、夜風、列、影

秋の虫送り」の俳句例 (3件)

虫送る火の粉こぼるる稲の上
飯田蛇笏【現代語訳】虫送りの松明から散りこぼれる火の粉が、暗闇の中で実りつつある稲穂の上に落ちていく。【鑑賞】夜の闇の中、揺れる松明からパチパチとこぼれる火の粉と、大切に育てられた稲穂の取り合わせが非常に鮮烈です。農村の祈りの熱量と夜の静けさが凝縮された名句です。
虫送る火の動きゐる夜の山
細見綾子【現代語訳】夜の山肌を縫うように、虫送りの松明の火がゆっくりと動いているのが見える。【鑑賞】遠景から虫送りの行列を静かに捉えた一句です。暗い山あいに点々と連なる火の動きを見つめることで、自然の広大さと人間の素朴な祈りの営みが美しく対比されています。
虫送り火の影低し稲の花
前田普羅【現代語訳】虫送りの松明の火影が低く揺れ、ひっそりと咲く稲の花をかすかに照らし出している。【鑑賞】初秋に咲く繊細な「稲の花」と、低く揺れる松明の灯火の対比が印象的です。害虫から稲を守りたいという農民の真摯な眼差しと、静かな夜気を感じさせます。

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