秋の㡡

秋の㡡

あきのかや

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意味・由来

「秋の㡡(あきのかや)」とは、立秋を過ぎてもなお吊られたままになっている蚊帳(かや)のことです。「残る蚊帳」「名残の蚊帳」とも呼ばれます。本来は夏の害虫である蚊を防ぐための道具ですが、秋風が吹き始める頃になっても片付けられずに残っている様子には、過ぎ去った夏への名残惜しさや、秋の夜のわびしさが漂います。また、蚊除けとしてだけでなく、秋口の冷え込み(夜寒)をやわらげる防寒や、孤独感を包み込む cocoon(繭)のような役割としても捉えられます。

この季語で詠むコツ

夏の蚊帳が持つ「涼しさ」「賑やかさ」「安心感」に対して、「秋の蚊帳」は「肌寒さ」「孤独」「寂寥感」「季節の推移」を表現するのに適しています。蚊帳越しに見える月明かりや灯火の淡さ、蚊帳を通り抜ける夜風の冷たさ、一人で寝転ぶ空間の広さや寒々しさに着目すると、秋ならではの風情を描き出すことができます。

相性のいい言葉・取り合わせ

・視覚:灯(ともしび)、月影、影法師、青き、薄墨 ・触覚・感覚:夜寒(よざむ)、冷気、風、ひとり寝、やすらぎ ・心情・動作:名残、片寄す、吊る、引き寄せる、目覚む

秋の㡡」の俳句例 (3件)

旅人の心にも似よ秋の蚊帳
松尾芭蕉【現代語訳】秋の蚊帳の頼りなくわびしい風情は、どこか孤独に旅を続ける旅人の心に似ているようだ。 【鑑賞】旅先で吊られた秋の蚊帳を見つめ、自身の漂白の思いと重ね合わせた句。秋風に揺れる蚊帳の心細さが、旅情と見事に溶け合っています。
秋の蚊帳つりてひとりをおどろかす
与謝蕪村【現代語訳】秋になって蚊帳を吊り、その中に入ってみると、あらためて自分ひとりでいることの孤独さに愕然とする。 【鑑賞】夏の蚊帳は家族の団欒なども想起させますが、秋に一人で蚊帳を吊るとその寒々しさと孤独が際立ちます。「ひとりをおどろかす」という内省的な心理描写が秀逸です。
秋の蚊帳風をへだてて寝たるかな
向井去来【現代語訳】秋の蚊帳を吊り、秋風を薄い帳越しに隔てながら横になって寝ていることだ。 【鑑賞】蚊を防ぐためというより、秋の冷たい風を蚊帳の網目一枚でほんのり防ぎながら眠りにつく夜の静けさと肌寒さを、繊細な触覚で捉えた一句です。

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