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虎耳草(ゆきのした)は、初夏から夏にかけて、日陰の湿った岩場や古庭の片隅などにひっそりと咲くユキノシタ科の多年草です。漢字で「虎耳草」と書くのは、丸みを帯びて産毛の生えた葉が虎の耳に似ていることに由来します。一方で「雪の下」という呼び名は、冬の雪の下でも枯れずに青々とした葉を保つ強さから、あるいは群れ咲く白い花がまるで雪が降り積もったように見えることから名付けられたと伝えられています。細い花茎の先に咲く花は、上の三枚の花弁が小さく薄紅の斑点があり、下の二枚が白く大きく垂れ下がる独特の美しい形をしています。
虎耳草の魅力は、何といっても「薄暗い日陰」「静けさ」「微かな涼感」にあります。日向で華やかに咲く花ではなく、井戸端や石垣の隙間、水辺の岩陰といった湿り気のある場所によく馴染みます。花びらの形を「大」の字や人のかたちに見立てたり、初夏の暑さの中でふと見つけた涼しげな佇まいに着目したりすると、情景が鮮やかに立ち上がります。華やかさよりも、陰影や静寂を意識して詠み込むのが味わい深く仕上げる秘訣です。
・石垣(いしがき)/古井戸(ふるいど) ・蹲(つくばい)/濡れ縁(ぬれえん) ・日陰(ひかげ)/岩肌(いわはだ) ・雫(しずく)/苔(こけ) ・白き花(しろきはな)/楚々として(そそとして)