虚抜大根

虚抜大根

うろぬきだいこん

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意味・由来

「虚抜大根(うろぬきだいこん)」とは、秋に大根の種をまいた後、苗が密集して育つのを防ぎ、良い株を太らせるために間引いた(間引きした)小さな大根のことです。「うろぬく」とは「間引く」を意味する古い言葉や方言に由来します。大きく育つ前の若く柔らかな葉や、まだ細く白い根は、浅漬けや汁の実、炒め物などにして食卓に上ります。畑の手入れという農作業の情景とともに、秋の実りの過程にある素朴で瑞々しい命の恵みを感じさせる生活感豊かな季語です。

この季語で詠むコツ

虚抜大根の魅力は、その「若々しさ」「素朴さ」「小さく愛らしい姿」にあります。一人前に太った大根とは異なり、細長いひ弱な根や柔らかな青葉のみずみずしい緑、土の香り、冷たくなり始めた井戸水や水道水で洗う様子などを丁寧に描写すると実感がこもります。また、間引くという少し切ない作業と、それを夕餉(ゆうげ)の恵みとして大切にいただく農の暮らしの温かさを重ねて詠むのも効果的です。

相性のいい言葉・取り合わせ

・視覚:みどり、青き葉、細き根、泥、水引く、夕餉、井戸端 ・触覚・嗅覚:土の香、冷たき水、みづみづし、やはらか ・動作:洗ふ、間引く、抜く、刻む、漬く

虚抜大根」の俳句例 (3件)

虚抜大根洗へば細き根の白し
富安風生【現代語訳】間引いたばかりの大根を水で洗うと、泥が落ちてまだ細い根の白さが際立って見えてくる。 【鑑賞】間引かれたばかりの若い大根の、土を洗い流した瞬間の鮮やかな白さに注目した写生句です。秋の澄んだ水と、小さくも清らかな大根のコントラストが目に浮かびます。
虚抜大根のあはれも土の匂ひかな
久保田万太郎【現代語訳】間引かれてしまった大根の小さな姿には哀れさを感じるが、それとともに立ちのぼる土の匂いがしみじみと感じられることだ。 【鑑賞】他の株を育てるために犠牲となった小さな大根への哀感を、「土の匂ひ」という素朴な温もりで包み込んでいます。万太郎らしい下町情緒と優しい眼差しが漂う名句です。
虚抜大根手許明るく洗ひをり
中村汀女【現代語訳】間引いた大根を洗っていると、その鮮やかな緑と白の輝きで手元が明るく照らされるように感じられる。 【鑑賞】台所や井戸端での日常のひとコマを瑞々しく切り取っています。「手許明るく」という表現に、秋のみずみずしい野菜を扱う喜びと、日々の家庭生活への深い愛着が表れています。

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